2019 Fiscal Year Research-status Report
BRD4、EGFR発現口腔がんにおけるmiR-3140の治療応用性の検討
Project/Area Number |
19K21406
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
外内 えり奈 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (50826831)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 口腔がん / microRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
microRNA(miRNA)は、それ自身はタンパク質をコードしていない、短いノンコーディングRNAであり、1つのmiRNAは複数の遺伝子を多面的に抑制する機能を有する。これまでの研究でmiR-3140は、がん細胞増殖を亢進させるがん遺伝子BRD4やEGFRを抑制する機能を有することを報告した。口腔がんにおいては、EGFRをターゲットとするキメラ抗体が臨床で適用されており、一定の延命効果を示している。実際に口腔がん臨床検体においては、7.7% がEGFRの増幅を有していることが言われている。そこで、口腔がん細胞株の遺伝的背景を評価し、EGFRの増幅の有無でmiR-3140の腫瘍抑制効果に差が出るのかを評価することとした。口腔がん細胞株から抽出したRNAでシークエンス解析を行い、EGFR増幅の有無で細胞株を大別した。その中で、EGFR増幅を有しEGFRタンパク質発現も高い細胞株としてHSC2、EGFR増幅なくタンパク質発現も低い細胞株としてHOC313を使用することとした。miR-3140をそれぞれの細胞株に導入すると、どちらとも著明な腫瘍細胞増殖抑制効果を示した。したがって、miR-3140はEGFR経路だけではなく、口腔がんにおける他の重要な経路も複合的に抑制することでがん細胞増殖抑制効果を示すことが推察された。今後はmiR-3140を他の細胞株に導入し、細胞増殖抑制能の評価を行うことや、miR-3140の重要な標的遺伝子であるBRD4の口腔がんでの重要性について検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
限られた条件の中で、効率のよい実験計画を立案するべく、公共データベースから得られる情報を有意義に活用できるように探索している。本研究を行うにあたり、実験器材の購入や環境整備が必要であり、時間を要した。現在までにがん細胞培養実験の環境を整え、実験を進めている。がん細胞増殖抑制効果を見るために適した細胞株の選定や、条件検討を行い、多種の口腔がん細胞株にmiR-3140を導入した際の効果を評価している。そのうえで、miR-3140導入で遺伝子発現がどのように変化するかを検討し、口腔がんで抑制しうる重要な経路の同定を行う方針である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、より重要な遺伝子を複合的に抑制できるmiRNAを応用することを目的としている。これまでの研究で、miR-3140はBRD4やEGFRを抑制することを機能としていることを示してきた。まずは、既知の口腔がん治療薬のターゲットであるEGFRに着目し、EGFR発現の高い口腔がん細胞株と、EGFR発現の低い細胞株にmiR-3140を導入することで、細胞増殖抑制能やEGFRタンパク発現量に与える挙動の違いを評価する。これにより、EGFR経路への依存度によりmiR-3140の抗腫瘍効果に差を生じるかを検討し、臨床でmiR-3140を使用する際にEGFRがマーカーとして有用かどうかを評価する。さらに、miR-3140はEGFRの3’UTR領域に結合して発現そのものを低下させるため、抗EGFR抗体の使用で発生するATP binding pocket部の変異により、治療抵抗性を示すがんに対しても、効果が見込める。既存の分子標的治療薬に抵抗性をもつがん細胞にmiR-3140を導入し、抗腫瘍効果を評価することで、現在治療標的であるEGFR経路に対しても、miRNAを用いた新たな治療法の確立を試みる。また、miR-3140の重要なターゲット遺伝子としてMYCなどのがん遺伝子の転写を亢進させるBRD4がある。BRD4は乳がんなど他のがん種で分子標的薬の治療標的として有用な可能性が示唆され、研究が進んでいるが、過去の文献からも口腔がんでの検討が十分ではない。口腔がん細胞株のBRD4発現量を評価し、口腔がん細胞においても治療標的となりうる遺伝子であるかを検討する方針である。その後は口腔がん臨床検体でのmiR-3140、EGFR、BRD4の発現状況を評価し、miR-3140投与での治療戦略の可能性を評価予定である。
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Causes of Carryover |
microRNA (miRNA)は標的遺伝子を抑制する機能を持ち、複合的にがん抑制効果を有する。 本研究では、miR-3140の機能解析と、異なる遺伝背景の細胞を用いて効果の違いを検討することを目的としている。実験に用いる細胞の状態や条件につき検討事項が多く、予定していた研究に時間を要し、遺伝子発現状態の変化を解析するために次年度へ繰り越した。
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