2019 Fiscal Year Research-status Report
難治性舌癖に対する視覚的フィードバックを用いた訓練法の構築
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19K21420
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
柏村 晴子 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (20425268)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | EPG / 舌突出癖 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、舌突出癖などの「口腔機能発達不全症」により、不正咬合を有する患児に遭遇する機会が増えてきている。このような背景からも、我々小児歯科医は齲蝕管理のみでなく、口腔機能に関するアプローチを行うことが今後さらに重要になってきていると考えられる。しかしながら、舌の機能評価については、客観的な指標を用いた診断基準や機能訓練法、評価法については未だ明確な基準が決まっていないのが現状である。言語療法で用いられているElectropalatography(EPG)システムは、電極を配置した口蓋プレートを利用して口蓋に接触する舌の位置を外部に表出できる舌位評価装置である。我々は、咬合様式の異なる2名の被験者に対して、EPGシステムを用い構音時の舌の口蓋への接触パターン調査し、口腔機能発達不全症に対する診断や治療への応用について検討した。 嚥下時の計測では、異常嚥下癖を持つ症例において舌の口蓋への異常な接触状態が表記され患児や保護者に視覚的に伝えることができた。構音では、聴覚のみでは判定ができなかった「(あ)さ」「(あ)ち」発音時での異常な接触状態が表記され、発音時での舌の異常な運動をとらえることができた。また「(あ)た」発音時では、両被験者の口蓋接触パターンには違いがなく、発音時のビデオ撮影からどちらにも舌の突出が観察された。 今回の取り組みを通して、EPGシステムは構音だけでなく嚥下時の舌の動きの異常をとらえることができ、口腔機能発達不全の診断と治療に効果的であることが示された。また歯科医師による構音異常の判定に有用であることもわかり、歯科医療と言語療法の多職種間連携による取り組みが可能となることが分かった。EPGシステムは、舌の機能異常、発達不全を客観的に評価できる診断ツールとして期待できるため、今後は歯科医療にも積極的に取り入れ活用してきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、症例数を増やすため、本研究に同意し参加して下さる患児および保護者に対し、EPG口蓋床を用い測定を行っている段階である。しかし、コロナによる緊急事態宣言発令のため、患者収集も一時中断を余儀なくされている。
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Strategy for Future Research Activity |
EPGシステムによって口蓋への舌の接触パターンを知ることで、構音時の舌運動の問題点を視覚的に捉えることが容易となり、診断の客観性、機能訓練への効果などが期待できると考えている。よってEPGシステムを使った小児での正常歯列および正常構音児の標準的な口蓋接触パターンを作製していく必要がある。そのため、今後症例数を増やし検討を続けていく予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度は、本研究に同意し参加して下さる患児および保護者の収集や装置納入期間にやや時間を要したため、次年度繰越しを希望した。前年度までの研究を通じ装置作製依頼など、システム化できた点が多いため、本年度はこの経験を活かしていきたいと考えている。 次年度の予算の使用については本研究を遂行するにあたり、1つでも多くのデータを収集することが必要であると考えているため、EPG口蓋床作製のために物品費を計上している。また学会発表を予定しているため旅費を計上した。
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