2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of Vascular Endothelial Function with Ultrasound in Neurological Diseases
Project/Area Number |
19K21428
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
岡田 陽子 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師(病院教員) (00435025)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 血管内皮機能 / 多発性硬化症 / 超音波 / flow mediated dilation / breath holding index / 経頭蓋ドップラー |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちは血管超音波検査を用いて、さまざまな神経疾患における内皮機能障害の頻度や病態との関連を解析してきた。 経頭蓋ドップラーを用いた血管反応性検査は有用であるが、日本人では側頭骨からの検査が困難な症例が多く、今回の研究で、下顎部からの検査で代用可能であることを検討し、報告した(第40回脳神経超音波学会/第24回栓子検出と治療学会、Neurosonology 34巻3号 )。 また、関節リウマチなどの自己免疫性疾患においては慢性炎症にともない心血管イベントが増加することが知られており (Steyers et al, Mol Sci, 2014)。中枢神経の代表的な炎症性疾患である多発性硬化症(MS)においても、以前のコホート研究により心血管イベントのリスクが高いと報告されていることから、MSにおける血管機能に注目して解析を行った。超音波を用いて、血管反応性を示す Breath holding index(BHI)と、内皮機能を示すflow mediated dilation(FMD)の2種類について、健常対象とMS群で比較検討を行ったところ、MS患者において、健常対象と比較して血管機能が高率に障害されていることが判明し、さらに血管内皮のNO産生能の指標であるFMDとMSの重症度との間に関連があることを世界で初めて見いだし、論文にて報告した(Senzaki et al, Mult Scler Relat Disord, 2021)。 近年、MSの再発抑制に貢献する多数の疾患修飾薬が上市されているが、二次進行型MSに対する有効な治療薬はほぼない。非侵襲的な超音波を用いた血管内皮機能の評価は神経疾患の新たな治療指標となる可能性があり、さらに血管内皮機能は二次進行型MSの画期的な治療標的としても有望である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間で150例の登録を予定していたが、コロナウイルス感染症の流行に伴い、患者登録が滞り、研究期間延長申請を行った。これにより、多発性硬化症を中心に130例まで登録例を増やすことができ、多発性硬化症患者では対象例と比較して血管内皮機能が低下しているとの研究成果が得られた。 免疫性神経疾患の内皮障害に関する先行研究はほとんどなく、非侵襲的かつ比較的低コストである超音波検査が、多発性硬化症の病態評価に有用である可能性示したことは、一定の成果であると考えられ、臨床面でも神経疾患増悪リスクの評価や治療効果の指標としての貢献が期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
代表的な免疫性神経疾患である多発性硬化症において、血管内皮機能が低下しており、病態の進行と相関を認めた。MSの病巣内では、vascular cell adhesion molecule-1 (VCAM-1)や炎症性サイトカインの発現が増加しており、内皮機能の障害は過剰な炎症反応の抑制に関わっていることから、我々はMSにおける内皮機能障害がさらに過剰な慢性炎症を促進しており、内皮機能が二次進行型MSの治療標的となりうる可能性を考慮している。これを明らかにするために、今回の研究内で、疾患対照群における血管内皮機能障害についての追加解析を予定している。
|
Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症の流行に伴い、患者登録が進まず、検査件数が少なかったこと、学会出張がweb参加となったことなどから使用額が予算を下回った。研究期間延長申請を行っており、延長期間内に予定計画のとおり予算を使用予定である。
|