2018 Fiscal Year Annual Research Report
精神科病棟入院中の患者に対する日本型リカバリープログラムの構築に関する基礎的研究
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18H06354
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
黒髪 恵 福岡大学, 医学部, 講師 (30535026)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | リカバリー / 精神疾患 / 精神科病棟 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、入院中に導入できるリカバリープログラムの構築を目指すものである。2018年度は精神科病棟入院中の患者を対象にリカバリープログラムの実践とその効果の検証を目的とした。 2018年度は、病棟スタッフのリカバリーについての理解を深めること、またプログラムへの参加を促すことを目的に、医師や看護師、作業療法士、精神保健福祉士を交えて勉強会を2回行った。勉強会は、リカバリーについての説明を30分その後プログラムの体験を60分の構成で行った。同時に研究計画についてスタッフ全体に説明し、病棟での実践が可能であるか、どのような課題が考えられるかを検討した。病棟スタッフからの研究受け入れは良好であり、プログラムについても入院中の患者に適しているのではないかという意見であった。課題としては入院中の患者が参加できるような体制をどう整えるか、参加をどう促していくかという意見であった。参加はコミュニティミーティングで広報し希望者を募るようにしていたが、自発的な参加は厳しいのではないかという意見もあった。病棟スタッフの了解を得たあと、毎週水曜日午後に実践をした。医師、看護師、作業療法士、精神保健福祉士など多職種も一緒に参加し、10月以降6クールプログラムを実施した。参加した入院患者24名を対象に調査を行った。調査内容は、QOL(WHOQOL26),リカバリーアセスメントスケール(RAS),ローゼンバーグ自尊感情尺度(自己肯定感)を使用し、QOL,リカバリーの促進の有無、自己肯定感の変化を調査した。24名に配布し21名回収(回収率87.5%)、有効回答率は70.8%であった。結果として、QOL、RAS、自己肯定感ともに平均値が上昇しており効果がみられている。2019年度はさらに事例数を増やし、効果を明らかにするとともに、効果がみられない事例についても分析を深めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の目標はリカバリープログラムの実践と評価であり、5クールを予定していたが、実際には6クール実施しており、ほぼ予定通りに実践できた。実践に至るまでの環境調整として、病棟スタッフとの勉強会やスタッフを対象としたプログラムの実践、またプログラムに関係するメンバーとのミーティングを行った。プログラム実施後は参加スタッフでのミーティングを行い記録に残し、リカバリーに関する情報を整理してスタッフにも共有した。参加者は1クールに2~4名で入院中の状態が変化しやすいことや退院が急に決まるなどの影響もあり、事例数は21例となかなか集まらない状況である。 リカバリープログラムの実践は、定期的に実施できており、その効果は病棟スタッフも感じることができている。今後も根気強くデータを蓄積していくことで信頼できる結果が得られると確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.プログラム実践の継続:昨年度毎月1クールを目安にプログラムを実践してきた。病棟のスケジュールに組み込まれており、リカバリープログラムに合わせてメタ認知プログラムも開始され、入院患者の退院支援に位置付けられている。今後もプログラムの人選を継続し調査を進めていく 2.プログラムのファシリテーターの育成:プログラム実践において看護師4名が担当チームとして活動している。参加患者に関する医師との調整やデータの収集補佐を主に行っているが、プログラムのファシリテーターができるように育成していくことでさらに継続の可能性が広がるとともに看護師自身の実践力にもつながる。また看護師とのミーティングは研究者にとっても貴重な意見がもらえ、お互いに成長できる場となっている。病棟看護師のファシリテーターの育成を目的とした勉強会を定期的に実施していく 3.病棟スタッフとの勉強会:前年度2回実施した勉強会を今年度も実施する。医師や看護師の異動や新人の入職があたこと、また勤務しているスタッフにとってもリカバリーに関する知識を深める機会となり、プログラムの効果および継続に影響するため今年度も勉強会を企画する。また病棟スタッフが多職種でリカバリーについて考える機会となっており、多職種協働でディスカッションする場の提供にもなっている。 4.今後の課題を明確にする:6クール実践する中で、最後まで参加できない患者が存在することやプログラム終了後のリカバリーに関する認識が継続しないこと参加者の選定など課題を感じる場面がある。これらの課題を明確にし、継続可能で効果的なプログラムの実践に向けたシステム改善が必要である。入院中の患者に対するリカバリープログラム構築の基礎的研究であり、今後導入、実践に向けた課題を明確にできるように、スタッフ及び参加者の意見を整理していく
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