2018 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノミクスと計算科学の手法に基づくワクチン抵抗性のA群ロタウイルスのゲノム解析
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18H06358
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
池森 亮 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 研究員 (90827255)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | ロタウイルス / ワクチン / ゲノム解析 / タンパク質立体構造解析 / 疫学解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、当研究所(地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所)に保管されている検体に関する情報の収集および解析、さらに検体からのA群ロタウイルス(RVA)の解析法の検討を行った。感染症発生動向調査事業に基づき、医療機関から当研究所に搬入された感染性胃腸炎疑いの患者検体のうち、RVA遺伝子が検出されRVA感染症であると当研究所で確定された検体は167件であった。RVAワクチンが認可された2012年から2018年にかけて、患者数の明確な減少は確認できなかった。しかし、検査の過程で明らかになっている検体に含まれるVP7遺伝子は、2009年から2013年まではG1遺伝子型が多数を占めていたのに対し、2014年以降はG2遺伝子型またはG3遺伝子型が多数を占めていた。このことから、ワクチン認可の前後では異なるRVAが流行していると考えられた。検体に付随する情報を確認したところ、2014年以降の一部の検体においてRVAワクチンの接種歴(RotaTeqの接種歴あり、Rotarixの接種歴あり、いずれかのワクチンの接種歴あり、あるいは接種歴無し)が確認できた。一方、RVAの解析法の検討は2018年に当研究所に搬入された2検体を用いて行った。患者糞便からのRNA抽出、逆転写反応、PCR、ならびにダイレクトシーケンスの条件検討を行った。これらの検討により、RNA抽出においてキットに付属するキャリアRNAを用いず行うこと、逆転写反応においてDenatureを95℃で行うこと等を決定した。以上の条件において、ダイレクトシーケンス法にてVP4、VP6、VP7、ならびにNSP4遺伝子の塩基配列を決定できることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
VP4、VP6、VP7及びNSP4遺伝子の解析について、条件検討に用いた2検体のうち、含有RNA量が少ない検体の解析が難航した。RNA抽出、逆転写反応、ならびにPCRの反応を最適化したものの、電気泳動で確認できるバンドは非常に薄く、ダイレクトシーケンスを行っても解読領域はごく短かった。そこで、GenomiPhi DNA Amplification KitというDNAを非特異的に増幅する試薬を検討した。逆転写反応で得られたcDNAを鋳型とし、GenomiPhi DNA Amplification Kitの反応によってDNA量を増加させ、これをテンプレートとしてPCRを行った。しかし、PCR後の反応産物を電気泳動してみると、多数のバンドが確認され、PCRの反応産物として予想されるサイズのバンドは確認できなかった。つまり、GenomiPhi DNA Amplification Kitを用いても、微量のウイルスRNAを解析することができなかった。原因として、糞便からのRNA抽出ではウイルスRNA以外にも多様なRNAが回収されるため、GenomiPhi DNA Amplification Kitを用いることにより様々なDNAが増幅されて夾雑物となり、PCR反応を行っても非特異的な反応しか起こらなかったことが考えられる。現状、微量のウイルスRNAをシーケンスする手段が無いため、ウイルス量が少ない検体については後回しし、充分なウイルスRNAを含む検体から解析する。後回しにした検体については、逆転写反応のプライマーを解析したい遺伝子に特異的なプライマーに変更する、またはNested PCR用のプライマーを設計する等、条件検討を続けていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、RVAワクチンの接種歴が確認できた2014年以降の検体を優先してダイレクトシーケンス法にて解析する。具体的には、RotaTeq接種済みの患者由来の4検体、Rotarix接種済み患者由来の5検体、種類について記載無しのRVAワクチン接種済みの患者由来の2検体、ならびにワクチン未接種の患者由来の6検体、以上計17検体を優先して解析する。同時に、次世代シーケンサーでの解析に関する条件検討を行う。得られたRVAの配列情報を基に、VP4、VP6、VP7およびNSP4遺伝子それぞれの近縁系統樹解析、時間系統樹解析、population dynamicss解析、計算額的手法を用いた多様性解析、タンパク質の立体構造解析遺伝学的解析、ならびにタンパク質の立体構造解析を包括的に行う。以上の解析の結果より、注目すべきRVAの遺伝子型を選定する。2013年以前の検体についても、選定した遺伝子型のRVAが含まれる検体を中心に解析を行い、2009年から2018年の10年間、大阪で流行しているRVAの性質がどのように経時的に変化していくのかを明らかにする。
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