2018 Fiscal Year Annual Research Report
自然災害の被害にあった地域での精神医療・保健体制の構築に関する研究
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18H06362
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
奥山 純子 (林) 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (40791108)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 災害精神医学 / 災害精神心理学 / 縦断研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
2011年3月11日に発生した東日本大震災は、被災した住民のメンタルヘルスに対して、発災直後から中期のみならず、現在まで大きな影響を及ぼしていると考えられる。当研究室では地震・津波により甚大な被害を受けた自治体の一つである七ヶ浜町と連携して、災害急性期の精神保健対応を開始し、その後も同町を中心に長期の精神保健活動を継続してきた。初回調査は東日本大震災発災から8ヶ月後に実施し、以降、年1回の頻度で追跡調査を行っている。 2018年度においてもこれまでと同様に、抑うつ状態や心的外傷後ストレス反応に関し、同じ評価尺度による追加調査を実施し、推移を把握した。K6(心理的苦痛評価尺度)で5点以上を呈する軽度以上の心理的苦痛を呈している参加者が約半数であったのが、年を経る毎に減少し、2014 年には一旦、2013 年度国民生活基礎調査による全国平均とほぼ同等の状態まで回復した。その後、災害公営住宅入居や高台移転等による環境の変化等が影響してか、2016 年、2017 年と心理的苦痛を感じている参加者がわずかに増えていたが、2018 年には再び全国平均とほぼ同等まで回復した。しかし、3割弱の参加者は心理的苦痛を呈している。 IES-R(心的外傷後ストレス反応評価尺度)の目安である 25 点以上の、一定以上の強い反応を示されている参加者の割合は震災の年に 32%、その翌年が 33%であったが、それ以降は 2013 年 30%、2014 年 28%、2015 年 25%、2016 年 19%、2017 年 19%、2018 年 15%と徐々に回復の傾向を示している。心的外傷後ストレス反応からの回復には時間を要するが、着実に改善してきていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の調査はスケジュール通りに進行したが、昨年度分の結果のまとめにやや時間がかかり、調査参加者への礼状ならびに結果のお知らせの送付が予定より2週間遅延した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はこれまで縦断的に行ってきた調査結果を基に、被災後長期的な変化に影響を与える因子の抽出を行い、その因子に働きかける効果的な支援方法を検討する。 さらに現存する支援方法の一つとして、公的機関やNPO法人が発行している被災後支援に関するパンフレットなどについて検討し、先に抽出された被災後に必要とされる因子の何に働きかけているのか、対象としている年代はどこに設定されているかなどについて検討する。 これらの結果から、自然災害の被災者に対するエビデンスに基づいた支援を確立していくことを考えている。
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Research Products
(5 results)