2018 Fiscal Year Annual Research Report
母子分離の母親のオキシトシンレベルと子どもへの愛着形成に関する研究
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18H06367
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
南 香奈 金沢大学, 保健学系, 助教 (30819389)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 母親 / オキシトシン / 愛着 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国では、高齢出産などの増加によりハイリスク新生児が増加している。母子間の触覚刺激や視覚刺激、泣き声や匂いといった体性感覚は、母性行動を促進するオキシトシンホルモンの分泌に影響を及ぼすと言われているが、児がNICUに入院となり、産後早期より母子分離を強いられている母親はその刺激が得られにくい状況にある。そこで、本研究の目的は、母子分離の有無による母親のオキシトシンレベルと子どもへの愛着形成について比較検討を行うことである。また、オキシトシンは非常に微量なホルモンであり、その測定方法が確立されていない現状がある。今回、その定量化についても検証を行う。 本研究計画は、①血中オキシトシン濃度の測定方法の検討、②産後の母親のオキシトシンの動態に関する実態調査、③母子分離の母親のオキシトシンレベルと愛着形成に関する検討(母児同室を行っている母親との比較)の3段階を予定している。 2018年度は第1段階として、血中オキシトシン濃度の定量化の方法を決定するため、プレサンプルを用いて、RIA(Raadio immnoassay)、およびELA(Enzyme immunoassay)の比較検証を行った。その結果、RIAにおいては、検出限界以下となる事が多い、測定値の不安定さといった課題がある事が分かった。また、放射線量を使用するため、操作可能な人材が限られる事、人体への影響のリスクが高い事より、本研究ではEIAを用いた定量化を行うこととした。また、採血は穿刺が必要な事から、より侵襲の少ない唾液で定量化が可能かどうか研究計画に追加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、2018年度中に①血中オキシトシン濃度の測定方法の検討、②産後の母親のオキシトシンの動態に関する実態調査の2段階まで進める予定であった。 ①の過程では、オキシトシンの定量化において、現在その測定方法の主軸となっているRIAおよびEIAのどちらを選択するかという事について、それぞれの特性や課題について先行研究と比較しながら検証を行った。定量化における再現性の確保は今後の実験結果に大きく左右するため、プレテストの結果をもとに専門家と何度もディスカッションを繰り返しながら丁寧に検討を進めた。また、本研究は、今後母親のメンタルヘルスや母子の愛着形成などにおけるスクリーニングへの応用の可能性を長期的な視野に置いているため、より侵襲の低い唾液での測定について検証する事を研究計画に追加した。 本研究の主要目的である③母子分離の母親のオキシトシンレベルと愛着形成に関する検討(母児同室を行っている母親との比較)については、母子分離を強いられている母親をリクルートする事にあたり、倫理的な課題が多くある事より、各協力施設と具体的な実施方法について検討を重ねる必要があった。 以上より、倫理審査申請までに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、②産後のオキシトシンの動態に関する調査を行う。 ③母子分離の母親のオキシトシンレベルと愛着形成に関する検討(母児同室を行っている母親との比較)を行うためには、産後の母親のオキシトシンレベルの動態の実態を把握する事は重要である。産後の母親は授乳によってオキシトシンのレベルが変動する事がすでに先行研究で示唆されている。本研究においても同様の結果を示すかを検証するともに、血液と唾液での相関の有無も検証する。サンプル採取を行う方法や、時期の検討はプレテスト等で完了しており、研究協力施設との調整も出来ている状況である。倫理審査申請が下り次第、サンプル採取に取り掛かる方針である。 また③については、倫理的課題が多く、対象者への心的負担も大きい事から、実施の可否を引き続き検討していく。
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