2018 Fiscal Year Annual Research Report
希望する終末期の療養場所の社会経済状況による格差とその関連要因に関する研究
Project/Area Number |
18H06389
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷田 真帆 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任助教 (30821996)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 社会疫学 / 社会階層間格差 / 高齢者 / 終末期 / 希望する療養場所 / 地域在住 |
Outline of Annual Research Achievements |
自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることは多くの人の願いであるが、それが叶わない人も少なくない。本研究では、居住地域や個人の社会階層による終末期の療養場所の選択しやすさがどのように異なるか、その実態を明らかにすることを試みている。本年度は、終末期に希望する療養場所や話し合いの状況が、個人の社会経済的状況によりどのように異なるか検討した。 本研究では日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study: JAGES)の横断データを用いた。JAGESは2016年に全国39市町村で要介護認定を受けていない地域在住高齢者約28万人に郵送自記式調査を行った。解析対象は調査対象の1/8にランダムに配布された、療養場所に関する設問が含まれる質問紙に回答した22,258人。目的変数を希望する療養場所の種類およびその話し合いの有無、説明変数を教育歴・所得・かかりつけ医の有無とし、個人をレベル1・居住学区をレベル2としたマルチレベルポワソン回帰分析を行った。 その結果、男女とも、希望する最期の場所の種類は、教育歴や所得階層による差があまりない一方、①教育歴が短いと、自分および家族の希望する最期の場所がわからない ②所得が低いと、希望する最期の場所を人と話し合っていない ③かかりつけ医がいないと、自分の希望する最期の場所がわからない・希望する最期の場所を人と話し合っていない 傾向が観察された。 この結果から、特に社会経済的に不利な立場にある高齢者が終末期の療養場所を日頃から考え・話し合える機会を提供したり、かかりつけ医を持つことをさらに勧めたりすることで、療養場所の選びやすさに関する社会階層間格差が縮小する可能性がある。このような取り組みを通じて、どのような状況におかれた人であっても、最期まで自分らしく生きるための選択をしやすくなることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請時に予定していた分析の一部は進められたが、2019年3月27日に出産し、妊娠期間中の想定以上の体調不良などのため、計画通りには研究が進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度得られた結果が世帯構成やまた居住する地域の要因によりどのように異なるか、またライフイベントの経験や、地域の人と語り合うサロンなどへの参加状況は、終末期の療養場所の希望の明確化や話し合い状況の改善にどの程度効果があるのかを検討する。前者については今回用いた横断データを利用する。後者については、本年度使用したデータと2019年度に行われる大規模調査とのリンケージが完了すれば検証可能となるが、もしリンケージが完了しない場合には、横断データを用いて予備分析を行う。またデータが利用可能となれば、保険者機能強化推進交付金(市町村分) に係る評価指標の市町村の得点を用い、市町村の医療介護連携状況が上記関連をどのように効果作用修飾するかについても検討する。この分析の際は、市町村の人口当たりの医療介護資源数や自宅死の割合などを調整する。 これらにより、終末期の療養場所選択における格差を縮小するための制度設計や地域での介入を提案する。 なお妊娠・出産のために当初の予定よりも研究計画が遅れており、現在得られている結果も公表に至っていないため、2019年度は留保の手続きを取り、研究が順調に進められそうな目処が立ってから復帰し研究を再開する予定とする。
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