2019 Fiscal Year Annual Research Report
Chitinase様蛋白質類を活用した受傷時期診断法の確立
Project/Area Number |
19K21472
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
村瀬 壮彦 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (40823315)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 受傷時期推定 / Chitinase-like 1 / 免疫組織化学 / 損傷皮膚 / ヒト |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、様々な年代への虐待件数が増加し、虐待死が疑われる法医剖検数も増加している。このような事例では長期に亘る暴力作用を証明するために受傷時期を判断することが求められる。しかし、受傷後のある特定の期日を科学的に診断する方法については未だに確立されておらず、受傷後の特異的な期日に発現する診断マーカーを同定・確立することは法医病理学分野における急務である。これまでのマウス損傷皮膚を用いた研究において、Chitinase-like 1(CHIL1)というタンパク質が受傷後1-3日の損傷を診断可能とするマーカーになりうることを明らかにしており、本研究ではCHIL1の発現動態を指標として、ヒト損傷皮膚の受傷時期診断法の確立を目的とした。 当分野に保存されている、法医剖検例から採取した受傷時期の様々なパラフィン包埋ヒト皮膚損傷検体(症例数:51、サンプル数:122)を用い、免疫組織化学法にてCHIL1発現を検討した。検体は受傷時期に基づき4群に分類した(A群:受傷後0-1日、B群:受傷後2-3日、C群:4-6日、D群:7日以降)。発現度合の指標として、損傷部の炎症細胞におけるCHIL1陽性率を用いた。CHIL1陽性率と受傷時期の相関を評価した。 CHIL1は主として損傷の炎症及び治癒反応のために浸潤したマクロファージに発現していた。受傷時期と陽性率の関係として、A群ではほぼ発現が認められず(平均値:0.1%)、B群では陽性細胞が出現し(1.0%)、C群で陽性のピークとなり(5.6%)、D群で減少した(1.3%)。C群は他群に比較して有意に陽性率が増加していた。 マウスを用いた同様の検討では受傷後1-3日でCHIL1陽性細胞が増加していたのに対し、本研究では受傷後4-6日に増加が認められた。ヒト損傷皮膚においてCHIL1の発現を評価することで、受傷後4-6日の損傷が検出できると考えられた。
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