2018 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト健康保菌者の薬剤耐性菌リザーバーとしての実態を解明する
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18H06407
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
福田 昭 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 研究員 (90827320)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 薬剤耐性菌 / リザーバー / モニタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
薬剤耐性菌の伝播・拡散は公衆衛生学上、大きな問題である。現在、抗菌薬が使用されるヒト・獣医療領域において薬剤耐性菌のモニタリング・サーベインランスが行われている。しかし、市中におけるヒトの薬剤耐性菌の拡散状況については継続的な調査が行われておらず、実態の把握がなされていない。 本研究では、健康保菌者における薬剤耐性菌の保有実態を明らかにするため、2013年から2018年に分離されたヒト健常者由来大腸菌380株の抗菌薬に対する薬剤感受性を測定した。特に、ヒト医療において使用され重要度の高い抗菌薬に着目し実施した。 各抗菌薬への耐性割合はセファリスポリン系 とアミノグリコシド系で5%未満、フルオロキノロン系で10%程度、ポリミキシン系で1%未満であった。一方で、カルバペネム系に耐性を示す株は認められなかった。2013-2018年において耐性割合に大きな変動は見られず、比較的低い耐性割合で推移していた。 次に、耐性株における薬剤耐性遺伝子の保有状況を確認した。セファロスポリン系抗菌薬に耐性を示した株でblaCTX-M-1 group遺伝子とblaCTX-M-9 group遺伝子の保有が認められた。また、ポリミキシン系抗菌薬(コリスチン)に耐性を示した1株でmcr-1遺伝子の保有が認められた。 当初、セファロスポリン・カルバペネム耐性菌/耐性遺伝子に着目し、伝播経路の解明に関わる解析を実施予定であったが、近年のホットトピックであるコリスチン耐性遺伝子保有株を得られたことからコリスチン耐性菌/耐性遺伝子を用いて遺伝学的背景の解析を実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
健康なヒトが保有する大腸菌の薬剤感受性と薬剤耐性遺伝子の保有の動向が明らかになりつつある。また、近年、注目度の高いコリスチン耐性遺伝子保有株の検出も認めら、当株の解析が進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き検体から菌株を分離し、薬剤感受性の動向を調べる。得られた薬剤感受性の結果を元に、薬剤耐性株の分子疫学解析・薬剤耐性遺伝子の型別を行うことで、遺伝学的背景を明らかにする。また、測定する薬剤の種類を増やし、既存のサーベイランス・モニタリングデータとの比較を行い、地域性・他の由来菌株との関連性を見出す。さらに本方法のモニタリングとしての妥当性を検討する。加えて、コリスチン耐性遺伝子保有株を用い、薬剤耐性菌/耐性遺伝子の伝播経路の把握およびヒト健常者の薬剤耐性菌/耐性遺伝子のリザーバーとしての役割を評価する。
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