2019 Fiscal Year Research-status Report
ヒト健康保菌者の薬剤耐性菌リザーバーとしての実態を解明する
Project/Area Number |
19K21486
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
福田 昭 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 研究員 (90827320)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 耐性菌 / モニタリング / リザーバー |
Outline of Annual Research Achievements |
薬剤耐性菌の伝播・拡散は公衆衛生学上、大きな問題である。現在、抗菌薬が使用されるヒト・獣医療領域において薬剤耐性菌のモニタリング・サーベインランスが行われている。しかし、市中におけるヒトの薬剤耐性菌の拡散状況については継続的な調査が行われておらず、実態の把握がなされていない。 本研究では、健康保菌者における薬剤耐性菌の保有実態を明らかにするため、2013から2019年に分離されたヒト健常者由来大腸菌517株の抗菌薬に対する薬剤感受性を測定した。ヒト医療・獣医療において使用されるグラム陰性菌に対する抗菌薬を中心に実施した。各抗菌薬への耐性割合はセファロスポリン系、アミノグリコシド系とテトラサイクリン系で5%未満、フルオロキノロン系で10%程度、ポリミキシン系とフォスフォマイシン系で1%未満であった。一方で、カルバペネム系とグリシルサイクリン系に耐性を示す株は認められなかった。2013-2019年においてセファロスポリン系、キノロン系抗菌薬に対する耐性割合は増加傾向にあった。また、この傾向は、JANISにおける院内感染菌大腸菌の耐性傾向と同様の傾向であった。 次に、耐性株における薬剤耐性遺伝子の保有状況を確認した。セファロスポリン系抗菌薬に耐性を示した株でblaCTX-M-1 group遺伝子、blaCTX-M-9 group遺伝子とblaCMY-2遺伝子の保有が認められた。また、ポリミキシン系抗菌薬(コリスチン)に耐性を示した1株からmcr-1遺伝子の保有が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
健康なヒトが保有する大腸菌の薬剤感受性と薬剤耐性遺伝子の保有の動向が明らかになりつつある。また、近年、注目度の高いコリスチン耐性遺伝子保有株の検出も認めた。 既存のサーベイランスデータと比較し、病院由来大腸菌と同様の耐性傾向が見られる抗菌薬種が確認され、院内―市中間の関連性が強く疑われた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在まで当初目的であった市中健常者の薬剤感受性の分布、動向が見えてきた。 市中健常者においても耐性菌保有が増加傾向にもあり、リザーバーとなっている可能性がある。 今後、大腸菌の型別、保有遺伝子型の決定を行い、他の由来株との関連性をより可視化する。 また、学会や論文誌において発信を行う。
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Causes of Carryover |
2019年6月28,29日に大阪市で実施されたG20会議に伴う、検査対応のため、2019年4月-6月にかけ、十分な時間を確保することが困難であった。また、11月に3週間、細菌検査の研修のため、所外研修に参加していた。これらのために、当初2019年度の秋を目安に国内の学会・研究会などで発表し、他の研究者の意見を頂いた後に、論文作成に移る予定であったが、参加が困難となった。 今後、学会発表・誌面発表を行う。これらに伴う、旅費・参加費、投稿費と不足データに対する追加実験を行う。
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