2018 Fiscal Year Annual Research Report
なぜ女性では運動後の筋損傷が生じにくいのか-ミトコンドリアの作用に着目して-
Project/Area Number |
18H06414
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
渡邊 大輝 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, UECポスドク研究員 (30823281)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 骨格筋 / エストロゲン / 卵巣摘出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終的な目標は,女性のほうが男性よりも運動後の筋損傷(長時間にわたる筋収縮力の低下と定義される)が生じにくい理由を明らかにすることである.この目標を達成することで,有益な波及効果が期待できる.例えば,女性アスリートに適切なトレーニングを提供できるようになるであろう.2018年度に行った研究の結果は,本研究のキーとなる結果であった.具体的な内容を以下に示す. 2018年度の研究では,1) 伸張性収縮後の筋収縮力の回復の程度に性差は存在するのか,2) 筋収縮力の回復にエストロゲンが関与するのかを明らかにすることとした.この2点を明らかにするために,以下の実験を行った.実験1では,雌雄のマウス(16週齢)を用い,伸張性収縮後の筋収縮力の回復の程度を比較した.伸張性収縮は,腓腹筋に対し250回行った.実験2では,8週齢の雌マウスを偽手術(Sham)群,卵巣摘出手術(OVX)群,および卵巣摘出後エストロゲンを投与する(OVX + E)群に分け,手術後8週間にわたって飼育した.その後,伸張性収縮(実験1と同様のプロトコール)を負荷し,筋収縮力の回復の程度を比較した.実験1の結果,伸張性収縮負荷直後においては,筋収縮力の低下の程度に雌雄間で顕著な違いは認められなかったが,伸張性収縮負荷3日後において,雌と比較し雄では筋収縮力が著しく低下することが示された.実験2の結果,伸張性収縮3日後において,Sham群およびOVX + E群と比較し,OVX群で筋収縮力が著しく低下することが示された.注目すべきは,雄の筋収縮力の低下の程度が,卵巣摘出群の筋収縮力の低下の程度と同等であったことであった.これらの結果は,1) 雄と比較し雌では,筋損傷が迅速に回復すること,2) この違いにはエストロゲンの作用が関与する可能性が高いことを示唆する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の理由から,「おおむねに順調に進行している」と判断を下した:1) 研究計画全体の最も重要な測定が終了したこと,2) メカニズムを検討するために必要なサンプルの作製自体は終了したこと.
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Strategy for Future Research Activity |
伸張性収縮負荷3日後は,1) 炎症細胞の浸潤等による筋細胞外からのダメージ,および2) 細胞内タンパク質分解酵素の活性化に伴う筋細胞内のダメージが,最も顕著な時期である.これらのダメージの根本的な原因の一つが細胞内Ca2+濃度([Ca2+]i)の過度な上昇にあるといわれており,この過度な[Ca2+]iの上昇は様々な因子によって緩和される.その因子の中でも重要だと思われるものは,筋小胞体およびミトコンドリアである.今後はこの2つの細胞内小器官に着目し,これまで得られた結果のメカニズムを追究する.このメカニズムの追究に関しては,生化学的手法(ウェスタンブロッティングや酵素活性の測定法),生理学的手法(スキンドファイバーを用いた各細胞小器官の機能測定法),および形態学的手法(電子顕微鏡法など)を用いる.
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Research Products
(2 results)