2018 Fiscal Year Annual Research Report
潜在的体罰容認派は存在するか――体罰行使場面観察中の生理反応に着目した検討――
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18H06419
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
内田 遼介 法政大学, スポーツ研究センター, 研究員 (30589114)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 体罰 / 運動部活動 / コーチング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,運動部活動場面での体罰を顕在的には否認しているが,心の内では容認している「潜在的体罰容認派」の存在を明らかにすることであった。本年度は,この目的に関わるオンライン調査と予備実験を実施した。まず,「潜在的体罰容認派」の存在を明らかにする際の前提となる仮説(坂本, 2015)の妥当性について,オンライン調査で検討した。坂本(2015)は,なぜ運動部活動における体罰・暴力が容認されるのか,その一つの原因として身体的負荷に着目した説を提唱している。この説によれば,体罰・暴力を容認するのは,厳しいトレーニングによって自己や他者の身体の痛みや苦しみに対する感受性が失われる方向で育まれているからだと推察している。この説の妥当性を検討するべく,クラウドソーシング事業者を通じて調査対象者を募集し,オンライン上で調査票に回答を求めた。得られた回答をもとに分析を行った結果,坂本(2015)の説を支持するような一連のプロセスが認められた。得られた結果については,次年度以降に開催される体育・スポーツ科学に関連する学会大会において発表する予定である。次いで,本実験の実施に向けて,体罰行使場面観察中の生理反応を測定する予備実験を行った。その際,①生理反応の測定に関わる一連の手続きを確認すること,②本実験で実際に測定する生理反応を選定することの2点に焦点を絞って実験を行った。日常的に競技スポーツを行っている学生8名を対象に実験を実施し,体罰行使場面を詳述した文章を提示している際の生理反応を測定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備実験に関して,当初の計画では映像刺激を使用する予定であった。しかし,手続き上の問題で年度内に映像刺激を使った実験計画で実施することが難しくなったことから,本年度は映像刺激ではなく,文章刺激に変更して予備実験を実施した。提示する刺激内容に変更があったものの,当初の目的であった生理反応の測定に関わる一連の手続きを確認できたこと,本実験で実際に測定する生理反応の選定を行えたこと,実験手続きの修正点などが把握できたことなどから,おおむね順調に進展したものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
既に得られたオンライン調査の結果について,改めて同様の結果が再現されるのかについて確認する予定である。本実験については,映像刺激を使用する予定で準備を進める。ただし,映像刺激を提示することに倫理的な問題が生じた場合は,既に実施した予備実験と同様に,体罰行使場面を詳述した文章刺激を使って実施する予定である。
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