2018 Fiscal Year Annual Research Report
運動による抗うつ・抗不安効果における脂肪組織の役割の解明
Project/Area Number |
18H06429
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
冨賀 裕貴 福岡大学, 公私立大学の部局等, ポスト・ドクター (50826394)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 運動 / 脂肪組織 / 海馬 / 不安 |
Outline of Annual Research Achievements |
運動などの身体活動/不活動が多臓器に恩恵効果をもたらすことはよく知られているが,その分子機構について不明な点が多く残されている.我々はこれまでの研究から,脂肪組織量は,不安様行動及び海馬の不安マーカー分子である神経型一酸化窒素合成酵素 (nNOS) 発現量と正相関することを報告した.この知見から,脂肪組織自体が不安様行動に何らかの負の影響を与えていると想定され,運動や肥満による脂肪組織の量的・質的な変化が,心の健康をコントロールしているという仮説の着想に至った.本研究では,運動により鍛えられた脂肪組織の移植技術を用い,脂肪組織の運動への適応が,うつ・不安様行動に及ぼす影響を直接的に評価することを目的とした. 本年度は脂肪組織移植技術の確立及び予備実験の実施を目的とした.まず,運動トレーニングマウスモデルを作成し,脂肪組織の運動適応を確かめた.その結果,11日間の運動は皮下白色脂肪組織における褐色化マーカーであるUCP1発現量を顕著に増加させた.したがって,運動脂肪移植モデルを作成するために用いる脂肪組織として適していると考えられた.また別のマウスを用いて無処置の皮下白色脂肪組織をドナーマウスへ移植し飼育したところ,摂餌量や体重の減少なく偽手術マウスと同様に成長することが確認された.当初の計画では,本年度末においてこれらの予備実験結果を用いて運動マウスの脂肪移植がうつ・不安様行動に及ぼす影響を検証する予定であった.しかしながら,動物行動解析系の構築に一部遅れを生じ,これについては次年度に持ち越すこととなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の目的は,脂肪組織移植技術の確立及び予備実験の実施であった.当初の計画通り脂肪移植技術の確立及び予備実験の実施は完了した.しかしながら,動物行動解析の実験系セットアップに時間を要し,本年度内に脂肪移植動物の行動評価を行うことができなかった.一方で,すでに次年度初頭での行動解析実験系セットアップに向けて準備は進んでおり,当初の計画には速やかに着手できると予想される.そのため,当初の計画よりも進捗がやや遅れていると判断された.
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Strategy for Future Research Activity |
行動実験解析の実験系セットアップ並びに運動トレーニングマウス飼育を並行して着手し,運動による抗うつ・抗不安効果における脂肪組織の役割解明を目指す. 2019年度は,非運動及び運動トレーニングドナーマウスの飼育を開始する.偽手術群,非運動脂肪移植群,運動脂肪移植群の3群を設定し,行動テストを実施する.行動テストは,高架式十字迷路試験,強制水泳試験の実施を計画しており,うつ・不安様行動を包括的に評価する.これらの実験計画は,これまで申請者が現所属研究室においても半年間でセットアップした実験系であるため補助事業期間中に十分に実施できる内容であると考えている.
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