2018 Fiscal Year Annual Research Report
半側空間無視に対する自動車運転再開を目指した評価手法と治療アプローチの開発
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18H06431
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
大松 聡子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 運動機能系障害研究部, 流動研究員 (10824849)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 半側空間無視 / 自動車運転 / 視線計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
自動車運転において必要な情報取得過程を検討し、無視症例の保たれている側面と、そうでない逸脱された側面を評価するため、ドライブレコーダーを用いた大変シンプルな運転映像を作成し、その映像視認時の視線分析を実施した。【方法】実際に運転を実施している健常成人(中高齢者)と既存検査にて軽度~無視症状なしと判定された無視患者に加え、実際に運転再開を果たした脳卒中患者を対象に、視線計測装置付きPCモニタの前に座り、『あたかも自分が運転するようなつもりで』運転動画視認中の眼球運動を記録した。【結果】健常成人の場合、カーブや曲がる方向に視線が向かい、その傾向は左右類似していた。一方、無視症例では右カーブや右折では健常と類似していたが、左カーブや左折時に予測的な左方向への探索が乏しいという結果を得た。一方、抽象的な動画と比較して左空間へ注視点が拡大する例が散見されたことから、運転場面という経験を伴う文脈によって無視空間への気づきを高められる可能性が示唆された。
損傷部位における脳の解剖学的分析を行うことでネットワークのどこに停滞があるかを明らかにしたうえで、視線特性との関連を明らかにするため、まずは脳の解剖学的分析を実施した。【方法】磁気共鳴画像(MRI)計測による解剖学的分析を、拡散テンソル画像を用いて皮質下の神経線維束の描出を実施し、加えて損傷程度をFA(Fractionalanisotropy)値にて算出した。無視症状に加えて、視野障害を併発する症例が含まれたことから、視野障害に関連する視放線や視野障害で重要な経路となる盲視(第一次視覚野が損傷した患者において、現象的な視覚意識がないにもかかわらず見られる、視覚誘導性の自発的な反応のこと)の評価や盲視で必要な経路の定量化も追加で実施していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自動車運転時に必要な情報取得を評価するため、ドライブレコーダーを用いて作成した運転時の映像視認中の視線分析を実施した。その結果、机上検査で無視症状が軽症~無視なしと判定された症例にて右カーブや右折では健常と同様な視線特性だったが、左カーブや左折時に予測的な左方向への探索が乏しい結果を得た。一方、抽象的な動画と比較して左空間へ注視点が拡大する例が散見されたことから、運転場面という経験を伴う文脈によって無視空間への気づきを高められる可能性が示唆された。これらの結果は、国内の学会で発表済みである。 脳の解剖学的分析において、無視症状に加えて視野障害を伴うとまた違った特性を反映することから、拡散テンソル画像を用いて注意ネットワークとして知られている上縦束だけでなく視放線の定量化も合わせて実施している(研修参加済み)。
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Strategy for Future Research Activity |
視線計測の対象者を増やしていき、損傷部位における脳の解剖学的分析を行うことでネットワークのどこに停滞があるとどのような視線特性をもつのか、脳の解剖特性と視線特性の関連を明らかにする。(方法)磁気共鳴画像(MRI)計測による解剖学的分析を、損傷領域の分析に加え、拡散テンソル画像を用いて皮質下の神経線維束の損傷程度をFA(Fractional anisotropy)値にて分析する。その結果と視線結果の関連性を、脳の解剖学的分析(voxel-based lesion symptom mapping;VLSM)(Bates et al. 2003)手法や、側頭-頭頂-前頭を繋ぐ上縦束Ⅰ-Ⅲ枝(Thiebautde Schotten et al. 2012)を中心にFA 値左右比(健側と比較した損傷程度)を用いて照合する。また、半側空間無視症状に加え、視野障害を併発すると視線特性が全く異なってくることから、視野障害に関連する視放線や視野障害で重要な経路となる盲視(第一次視覚野が損傷した患者において、現象的な視覚意識がないにもかかわらず見られる、視覚誘導性の自発的な反応のこと)の評価や盲視で必要な経路(上丘を介する経路や外側膝状体を介する経路等)の定量化も追加で実施していく予定である。視野障害があっても、盲視のトレーニングを行うことで盲空間に対する応答性を高目られる可能性があることから、介入の糸口にも繋がるためである。
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