2018 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the mechanism underlying oocyte maturation dysfunction by biotin deficiency
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18H06438
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
辻 愛 奈良女子大学, 生活環境科学系, 助教 (40826749)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | ビオチン / 欠乏 / 卵子 / 老化 / マウス / 脂肪 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
卵子の質の劣化は、減数分裂異常を引き起こし、流産、染色体異常、不妊症の原因となる。卵子の質が劣化する要因には活性酸素、ミトコンドリア機能の低下、代謝異常やそれに付随するエネルギー不足など、様々な要因があるとされている。先行研究により水溶性ビタミンであるビオチン不足によって、卵子の質が低下することを明らかにしたが、上記に述べた要因が関与しているのかは不明であった。そこで、ビオチン不足・欠乏によって起きる減数分裂異常の要因が何かを明らかにすることを目的とした。ビオチンは補酵素として脂肪酸合成にも関与するため、不足によって卵子中の脂肪酸蓄積量は低下すると予想した。脂肪酸は減数分裂時のエネルギー源として利用されることから、脂肪酸蓄積量の低下によってエネルギー不足となる。これが要因となって減数分裂異常が引き起こされたと仮説を立てた。また、仮説以外の要因を検討するために、活性酸素およびミトコンドリア機能を調べた。ビオチン不足あるいは欠乏モデルマウスを作製し、卵子の脂肪酸量をNile Redを用いて解析した。また、卵子の活性酸素、ミトコンドリア活性を測定した。その結果、ビオチン不足によって卵子中の脂肪酸蓄積量が低下し、ミトコンドリア機能も低下することが分かった。次に、不足モデルマウスにビオチンを与えた。脱毛症状の消失などから栄養状態は回復したと考えられるが、脂肪酸蓄積量およびミトコンドリア機能は対照群と同等レベルにまで回復しないことが分かった。よって、ビオチン不足・欠乏による減数分裂異常には、脂肪酸合成量の低下およびミトコンドリア機能の低下によるエネルギー不足が要因の一つであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しい研究環境下で、動物飼育方法、卵子評価方法、ビオチン測定方法が確立できた。ビオチン低栄養による減数分裂異常の要因に、脂肪酸蓄積量の減少およびミトコンドリア機能の低下が関与していることを明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はビオチン不足によって卵子の脂肪酸蓄積量が低下すること、ミトコンドリア機能が低下することが示唆された。ビオチンは脂肪酸合成だけではなく、補酵素として糖新生などエネルギー代謝に関与している。脂肪酸合成だけでなく、これらのエネルギー代謝におよぼす影響を検討する。また、卵子の減数分裂異常と関連があるとされている、ヒストンのアセチル化異常やメチル化異常についても検討する予定である。
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