2018 Fiscal Year Annual Research Report
細胞ストレス応答の解析から迫る「疲労」の分子細胞生物学的実態
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18H06446
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
赤井 良子 金沢医科大学, 総合医学研究所, 助手 (60823317)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 疲労 / ストレス / 生体イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
古くから今日に至るまで疲労研究は心療内科学、栄養学、感染学、免疫学、睡眠学、脳神経科学など様々な視点から行われてきた。その甲斐あって疲労を科学的に評価する方法は確立されつつあり、血中の酸化ストレス度や唾液中のヘルペスウイルス数などは疲労の指標となっている。また以前には信じられていた学説も訂正されつつある。例えば、無酸素運動時に筋肉組織中で生じる代謝産物の乳酸は疲労を生じさせるかのような誤解があったが、現在では乳酸にそのような機能は備わらないことが確認されている。その一方で未だに疲労の実態を理解することはできておらず、誰しもが感じる疲労の発生/回復メカニズムはほとんど分かっていない。その大きな理由としては疲労研究への分子生物学的および細胞生物学的な取り組みが弱いからだと考えている。そこで本研究では細胞ストレス応答や炎症反応に焦点を絞り、疲労の分子メカニズムに迫ることを一つの目的として、それを達成するために独自で開発した4種類のストレス可視化マウスを利用している。これらのマウスは異なるストレス(小胞体ストレス、酸化ストレス、統合ストレス、炎症ストレス)に応答して発光する性質を有しており、その発光を検出できる装置を使えば、マウスを生かしたままで特定のストレス応答分子が「いつ」「どこで」活性化するのか調べられる。各ストレス可視化マウスへの1週間の疲労負荷を与えながら、その間は1日おきに生体イメージングを行ってきた。実験終了時には血液の採取および各種臓器からRNAの抽出も行い、質量分析機や次世代シークエンサーを用いたオミックス解析に備えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスへの疲労負荷では一般に強制水泳や浸水飼育などの処置が施されることが多い。これらの処置を事前に試したところ、負荷が大きすぎて恐怖体験や体温低下の影響が心配される。そこで本研究では、睡眠不足(過酷な断眠とは異なる)が良い疲労負荷モデルになると考えて、メルクエスト社で販売されている睡眠障害ケージを利用することにした。このケージにおいてマウスは、餌や水を自由に摂れるが、常に回転カゴ内で過ごすことになる。回転カゴは抵抗の極めて小さい軸で支えられているため、少しでも動くと「ゆらゆら」してマウスの不眠時間が増すようになっている。ちなみにマウスを回転カゴに馴化させるために実験直前の1週間は回転カゴに出入り自由なケージで飼育した。また非睡眠障害のコントロール実験でも同じく回転カゴに出入り自由なケージを用いた。このような実験から現在までに得られている結果は以下の通りである。疲労負荷によってIRE1を介した小胞体ストレス応答とATF4を介した統合ストレス応答およびIL-1βを介した炎症反応が副腎で活性化することが生体イメージング解析から分かった。しかしながら酸化ストレス応答については調べた限り疲労負荷との関連性が見出せなかった。採取した血液を用いてdROM/BAPテストも行ったが、疲労負荷と非疲労負荷との間に差は見出せなかった。一方で副腎から抽出したRNAを用いた解析を行ったところ、疲労負荷で小胞体ストレス応答遺伝子の発現が有意に高まっていた。この結果は副腎でのストレスホルモン産生または分泌に小胞体ストレス応答機構が関与している可能性を示唆する。
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Strategy for Future Research Activity |
先述した通り、副腎ホルモンと小胞体ストレス応答機構の関連性を見出すことができたので、これについて詳細な解析を進める。加えて1年目にやり残している解析の続きも完了させたい。計画では各実験区分で使用するマウス数を雌雄8匹ずつとし、1実験期間(2週間)ごとに解析するマウス数を4匹としていることから、全実験を完了するのに単純計算で64週以上を必要とするが、まだ半分程度しか完了できていない。本応募の採択が2018年8月であったことを考えると当然なのだが、できる限り早急にマウスを準備して初期解析の完了を目指す。また睡眠障害ケージを利用する疲労負荷とは異なる取組に備えて脳波や筋電図を計測しながらのトレッドミルや採餌・給水可能な強制回転カゴを用いた疲労負荷モデルに関する検討も行う。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] IRE1α governs cytoskeleton remodelling and cell migration through a direct interaction with filamin A2018
Author(s)
Urra H, Henriquez DR, Canovas J, Villarroel-Campos D, Carreras-Sureda A, Pulgar E, Molina E, Hazari YM, Limia CM, Alvarez-Rojas S, Figueroa R, Vidal RL, Rodriguez DA, Rivera CA, Court FA, Couve A, Qi L, Chevet E, Akai R, Iwawaki T, Concha ML, Glavic A, Gonzalez-Billault C, Hetz C
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Journal Title
Nature Cell Biology
Volume: 20
Pages: 942~953
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Botulinum toxin B suppresses the pressure ulcer formation in cutaneous ischemia-reperfusion injury mouse model: Possible regulation of oxidative and endoplasmic reticulum stress2018
Author(s)
Sekiguchi A, Motegi SI, Uchiyama A, Uehara A, Fujiwara C, Yamazaki S, Perera B, Nakamura H, Ogino S, Yokoyama Y, Akai R, Iwawaki T, Ishikawa O
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Journal Title
Journal of Dermatological Science
Volume: 90
Pages: 144~153
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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