2018 Fiscal Year Annual Research Report
運動学的分析に基づいた疼痛リハビリテーションの効果検証
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18H06453
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
今井 亮太 畿央大学, 健康科学部, 客員講師 (40823240)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 術後痛 / タッピング動作 / 運動恐怖 / 運動学的解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
術後痛に対する心理的要因が痛みを慢性化させることは周知のこととなってきている.そ の中で,運動恐怖は日常生活動作の悪化や運動障害に起因し,さらには慢性疼痛発症の危険因子とされている.しかしながら,従来のアンケートによる運動恐怖の定性評価では多くのバイアスが含まれる問題がある.また,アンケートの定性評価は実施時間が長くなり,患者の負担が大きいことも問題視されている.申請者らはこのような問題意識の下,術後患者が運動方向を切り替える時間が長い現象に着目し,その現象を運動の躊躇と定義し,運動として表出される現象から運動恐怖を定量化できる可能性を示した.本研究の目的は,①術後患者が示す運動恐怖を運動学的解析によって,臨床現場で簡便かつ正確に判定できる評価システムを構築し,②慢性疼痛を発症させる要因を明らかにするとともに,③慢性疼痛を発症させないための新たなリハビリテーションを構築することである. 対象は上肢骨折術後患者であり,評価計測は,手指のタッピング運動を計測した.記録されたデータから「運動速度」,「運動範囲」,「運動リズム」,「運動の緩慢さ」,「運動の躊躇」を算出した.これらと痛み強度や運動恐怖,日常生活動作との関連性を検討した. 現在は,術後患者が示す運動学的特徴が明らかになりつつある.具体的には,日常生活動作や痛みの改善が,順調に認められる患者と停滞もしくは大きな改善が認められない患者との間に運動学的指標として評価している,運動速度や運動の躊躇,開口幅に差が認められた.また,これらの要因と痛みの慢性化に運動時痛や運動恐怖が関連し,慢性化の原因である可能性が示されている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は.①術後患者が示す運動恐怖を運動学的解析によって,臨床現場で簡便かつ正確に判定できる評価システムを構築し,②慢性疼痛を発症させる要因を明らかにするとともに,③慢性疼痛を発症させないための新たなリハビリテーションを構築することである.まず,術後患者が示す運動恐怖を運動学的解析によって,臨床現場で簡便かつ生活に判定できる評価システムの構築ができたため,術後患者が示す運動学的特徴を評価し解析できている.さらに,慢性疼痛を発症させる要因を明らかになりつつあり,最後の目的である新たなリハビリテーション開発に取り組んでいる.そのため,当初の計画以上に進展していると思われる. しかしながら,痛みの慢性化は様々な要因が関係しており,世界的にも効果的なリハビリテーションは不明確なままである.そのため,新たなリハビリテーションの開発の効果検証には時間を要する可能性がある.
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Strategy for Future Research Activity |
現在は,当初の計画通り,または計画以上に進展している.そのため,今後は統計解析から明確な痛みの慢性化に関わる要因を検討し,新たなリハビリテーション開発に取り組む.そして,これらの効果検証を行いたい. 新たなリハビリテーションの効果検証においては,今まで評価してきた手指タッピングタスクから得られる運動学的特徴を焦点に当て,リハビリテーションを実施していく.そうすることで,術後1ヶ月や2ヶ月後の運動機能ならびに日常生活動作の改善が通常よりも早期に得られる可能性がある.
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