2019 Fiscal Year Research-status Report
Research on dual-use character of emerging technology and its social control
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19K21567
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小林 信一 広島大学, 高等教育研究開発センター, 特任教授 (90186742)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細野 光章 岐阜大学, 研究推進・社会連携機構, 教授 (30525960)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 新興技術 / デュアルユース / 軍事研究 / 大学 / UARC / 科学技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代の高度科学技術は多かれ少なかれデュアルユース技術の性格を有している。今日、技術がテロや犯罪に悪用される可能性を検討し、新興技術においては研究開発の初期段階からそのデュアルユース性と社会的統制のあり方を検討することが社会にとっても避けられない課題となっている。本研究は、とくに新興技術のデュアルユース的性格に注目し、その社会的統制のあり方を検討することを目的に第1年度は以下の事項を実施した。 (1) 米国の事例調査 大学においてデュアルユース技術の研究開発の長い経験を持つ米国の事例は、まず第1に抑えるべきである。そこで、米国の2大学を訪問し、研究者、研究管理者、大学経営関係者に対して、大学(研究者)が国防省関連の研究資金をいかに受入れ、研究を実施しているか、その理由やメリット、研究者の考え方、態度などについて聞取り調査を行った。うち1大学については、国防省が助成して設置されたUniversity Affiliated Research Center (UARC) を訪問して、UARCの歴史、活動、運営、関連する制度など包括的に聞取り調査を実施した。もう一つの大学については、国防省からの資金を受け入れている研究ブロジェクトの事例を数例調査するとともに、機関としての資金獲得活動などについて聞き取り調査を実施した。なお、ともに基礎レベルの研究活動であり、機密研究ではない。いずれについても、実際に研究活動に携わる研究者や研究管理者からナマの情報が多数得られたことは大きい成果であるが、詳細は第2年度目に取りまとめたい。 (2) 社会的統制の仕組みに関する調査研究 聞取り調査の基盤として、また歴史的経緯や制度に関する「裏取り」の意味も含めて、軍事技術開発の扱いに関する米国政府の制度や慣行、米国大学側の慣行等について、米国政府資料調査、関連文献の調査などを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題のような、受け取り方次第では機微な研究にとっては、聞取り調査の対象を適切に選び、実際にアクセスすることが最大の難関である。幸い、米国大学について、国防省からのデュアルユース技術研究の助成を受けている事例、研究プロジェクトのみならず、University Affiliated Research Center (UARC) のような一定の規模のある事例についてバランスよく聞取り調査ができた点、聞取り相手も協力的であったことは、大きい成果である。 欧州の大学・研究機関等の実地調査についても着手する予定であったが、新型コロナ問題のため、見送ることにした点は、残念な要素である。欧州大学対象の本格的な調査は第2年度の予定ではあったが、その見通しも明るくはない。 以上の点で、期待以上にうまく進んでいる面があるものの、新型コロナ問題のため、今後の見通しは不透明である。全体としては、「おおむね順調」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、計画通り研究を実施する予定である。 ただし、第2年度については当初、海外調査を実施し、米国の他の事例、欧州諸国の事例等を追究する予定であったが、新型コロナ問題で、その実施が危ぶまれる。TV会議方式等も考えられるが、現地での調査によって得られる情報の豊かさとは比較にならないので、実施の方法等を検討したい。 これまでの実績を基に、学会誌での特集を提案し、2020年末までに原稿が集まる予定である。刊行は年度末か来年度初頭の見込みである。 このほか、当面は、学協会の大会等での口頭発表は困難であると見込まれるので、インターネット中継その他を利用した公開研究会等での成果発表も検討中である。
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Causes of Carryover |
新型コロナ問題のため、当初予定していた欧州調査の実施を見送ったことから、それに関連する費用の支出が次年度送りになった。 基本的には、第2年度に、第1年度に積残した海外調査も合わせて実施する予定である。新型コロナ問題で海外調査が実施できなくなる場合は、実施の延期とともに代替的手法の検討をしたいと考えている。
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