2022 Fiscal Year Annual Research Report
美術史と神経科学の協働実験美術史―カラヴァッジョ絵画の鑑賞者の心の深層を探る―
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19K21605
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小佐野 重利 東京大学, 相談支援研究開発センター, 特任教授 (70177210)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀田 達也 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (20214554)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | 実験美術史 / カラヴァッジョ絵画 / 絵画鑑賞者 / 眼球運動計測 / 脳機能イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
2021度実績報告に記した通り、玉川大学脳科学研究所教員たちに実験者に加わっていただき、同研究所のEyelink装備のMRIを使って最終目的の実験を実施した(9月~11月)。被験者は美術史専攻学生(Expert)13人、一般学生(Novice)24人の2グループ、実験に用いた絵画画像は、2020年度予備実験2と同様、カラヴァッジョ10点、カラヴァッジョ派10点、モンドリアン10点で、MRI実験ではChange Blindness (CV)(変化の見落とし課題)の前に、「自由鑑賞」(FV)を全30絵画につき各25秒間行なった。 データは解析中であるが、すでに判明した結果については、2023年4月6日にイタリア文化会館で開催された講演会「カラヴァッジョ絵画の鑑賞者の心の深層を探るー美術史と神経科学の実験美術史」(会場参加者169名)で発表し、神経科学研究者等からの有意義な質疑があった。 講演会では、MRI実験のうち、FVにおいて、各絵画に3か所設定したROI(Regions of Interest)への注視の時系列データとその時の脳部位の活動検出に注目した解析データに基づき発表した。結論は、以下の通り。①カラヴァッジョ絵画を見ているとき、被験者2グループに共通して、人物の顔を中心に情動経験を生み出す前帯状皮質、紡錘状回顔領域、扁桃体に活動が見られた。②両グループ間の比較では、Expertのほうが右上頭頂小葉(絵画内の事物への能動的な注視に関与)の活動が高く、またROIへの注視時間も長く、Noviceが見なかったROIをも見ていた。③モンドリアン絵画の鑑賞時に特徴的な脳活動は、線や色に対する初期視覚野で起こっていることで、視線パターンは両グループにあまり差異が見られない。また、実験美術史の課題、ストレスをかけない自由鑑賞を可能とする実験環境と計測機器の開発の必要性にも言及した。
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