2020 Fiscal Year Research-status Report
Philosophical Study of Theoretical Foundations of Psychiatry
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19K21606
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 貴之 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (20434607)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 精神医学の哲学 / 心の哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に以下の3つの活動を行った。①東京大学の榊原英輔氏らと共同で開催している精神医学と心理学の哲学に関する研究会を10回実施した。とくに、2020年12月には外部講演者として招待した名古屋大学の大平英樹教授が、感情の障害に関する講演を行った。一連の研究会の開催を通じて、現在の精神医学に存在する理論的問題とその議論状況に関する理解を深めた。②2020年5月に、上記研究会を元にした榊原英輔氏らとの共編著『心の臨床を哲学する』を出版した。執筆を担当した章「精神医学の多元性と科学性」では、精神医学に関するさまざまな一元的見方と多元的な見方を整理し、精神医学に関する見方として有望なのは、協業的な多元主義と分業的な多元主義の二つであるということを明らかにした。また、2020年7月には同書のオンライン合評会を開催し、担当章の内容について参加者と議論した。③精神神経学会第116回大会で開催されたシンポジウム「精神医学は心の医学か、脳の医学か?」に参加した。大会のオンライン化の影響により、予定していた発表を行うことはできなかったが、予定していた発表「精神医学の特殊性」の内容について、シンポジウムの中で口頭説明と議論を行った。発表では、現在の心の哲学における標準的な立場である機能主義やその背景にある階層的な自然観と、精神療法や生物学的精神医学といった異なるアプローチが並存する現在の精神医学の多元的なあり方は両立可能であることと、精神医学あるいはある精神疾患にとって特定のレベルが本質的だと言いうるかどうかが今後検討すべき問題であるということを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響による教育活動のオンライン化で、研究活動に十分な時間を割くことができなかった。また、対面での研究会等の活動を十分に行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の影響による研究活動への制約は今年度も続くと予想されるため、オンラインを前提として各種の研究活動を進める。オンラインであることの利点を活かし、遠方の研究者や海外研究者を講演者とした研究会の開催なども積極的に行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で、講演者を招いた研究会の開催や出張を伴う学会への参加ができなくなったため、これらの目的に使用することを予定していた予算に残額が生じることとなった。2021年度はオンラインでの研究会などを当初の予定よりも多く開催することや、英語論文の校正などに予算を活用することで、次年度使用額分および2021年度分の予算を使用する予定である。
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[Book] 心の臨床を哲学する2020
Author(s)
榊原英輔・田所重紀・東畑開人・鈴木貴之(編)
Total Pages
288
Publisher
新曜社
ISBN
978-4-7885-1680-9