2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K21611
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡田 裕成 大阪大学, 文学研究科, 教授 (00243741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 信宏 大阪大学, 文学研究科, 教授 (20221773)
池上 裕子 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (20507058)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | グローバルアート |
Outline of Annual Research Achievements |
急速にグローバル化する今日の世界で、西洋由来の「アート/芸術」は、概念の上でも、また現実の存在様態においても大きな変化の過程にある。本研究は、グローバリズムと文化の相互作用を具体的に解明するとともに、そこに産出される個別的な作品・事象を精密に考証する、領域横断的な「グローバルアート学」を提唱する。研究チームは、専門領域・フィールドを異にする美術史家2名と音楽学研究者1名の計3名で構成し、芸術作品における「グローバルなもの」と「ローカルなもの」の交渉の過程や、起源を異にする文化的要素の「節合」のメカニズムといった、共通の問題軸に沿って課題に取り組む。これにより、交渉的・境界的な場に生じつつある「グローバルアート」の研究に固有の分析概念と方法論を提示し、従来なかった学術的枠組みを挑戦的に構築する。 本年は代表者および分担者の間において協力しつつ、ヴェネツィア・ビエンナーレ日本代表作家である下道基行氏(アーティスト)、石倉敏明氏(文化人類学・秋田公立大学)らをゲストに招き、国立国際美術館において学際的シンポジウムを開催した。ここでは、現在世界的にも広がるアートと人類学の協働を視野におきつつ、グローバルアートのあり方について、アーティスト、文化人類学、美術史学の領域から幅広い議論を行った。シンポジウムは多くの専門家を含む100名を上回る徴収を集め、『毎日新聞』にも詳細な紹介記事が掲載された。また、シンポジム全体の書き起こしによる記録は『民族藝術学会誌 arts/ 』に全文が収録された。 分担者池上裕子は、戦後沖縄の美術に関する国際シンポジウムにおいて発表を行なうためイギリスに出張した。この成果はすでに別紙業績一覧に記載の通り公にされている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2月に予定したイローナ・カチュウ(ロサンゼルス・カウンティ美術館)の招聘は、先方勤務先の急な事情により延期となった。今後コロナ禍の推移を見つつ、開催に向け調整の予定。 ヴェネツィア・ビエンナーレ日本代表作家である下道基行氏(アーティスト)、石倉敏明氏(文化人類学・秋田公立大学)らをゲストに招き、国立国際美術館において開催した学際的シンポジウムは、多くの専門家を含む100名を上回る聴衆を集め、大きな成果をあげた。またその内容は、学会誌の特集として掲載された。 分担者はそれぞれの領域において、着実に研究を進め、別紙に記載の通りの目覚ましい成果を挙げている。 以上の状況に基づき、研究計画は概ね順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、コロナ禍の推移を慎重に見極めつつ、ルーク・スカボウスキ(マンチェスター大学)を招聘し、分担者・池上裕子を中心に現代アートの専門家を集めて研究集会を開催の予定である。スカボウスキは、ブラジルや沖縄など、今日の「アートワールド」において周縁的とされる地域のローカルな文脈に注目することで、既成のグローバルアート論の相対化を試みる意欲的な研究者であり、同じくアメリカ合衆国の戦後日系作家ロジャー・シモムラの研究を進める池上裕子と協働して、本プロジェックとの課題であるグローバルアート学構築の理論的枠組みの明確化をはかる。なお、招聘講演の内容は『民族藝術学会誌 arts/ 』に掲載の了解をすでに得ている。 代表者・岡田裕成と分担者・伊東信宏はそれぞれ、グローバルアート成立の歴史的経緯、および東欧を中心とする現代ポピュラー音楽の領域において、芸術作品における「グローバルなもの」と「ローカルなもの」の交渉の過程や、起源を異にする文化的要素の「節合」のメカニズムの解明に取り組む。 その成果も踏まえつつ、8月には、アートと「歴史の記憶」をテーマとしたシンポジウムも開催の予定である。 以上の計画を進めるため、岡田と池上は、コロナ禍の推移を見つつ、調査および打ち合わせのための海外出張をおこなう。
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Causes of Carryover |
招聘予定であったイローナ・カチュウが勤務先の事情により、来日できなかったため。本年、代替となる研究集会を開催の予定。
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Research Products
(10 results)