2021 Fiscal Year Research-status Report
スライアモン語のアクセント研究の新展開―母語が異なる研究者による共同研究の試み
Project/Area Number |
19K21627
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
渡辺 己 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (30304570)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | セイリッシュ語族 / スライアモン語 / アクセント / 音韻論 / 音声学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は,カナダで話されている北アメリカ先住民諸語のうちのセイリッシュ語族に属するスライアモン語について,特にいまだに解明されていないアクセント体系について,調査・研究するものである。そして,現地調査で,あと数名しかいない話者から良質の録音を録りつつ,母語が英語の研究協力者とともに録音を聞き,共同してアクセントについて解明していくものである。 ただし,この2年度(2020年度,2021年度)は新型コロナウイルスによる未曾有のパンデミックのため,予定していたカナダへの渡航と,ブリティッシュ・コロンビア州での現地調査がおこなえず,さらに,研究協力者のパトリシア・ショー氏もカナダ在住のため,お互いに行き来することができなかった。カナダ国内でもロックダウンされている時期が長く,調査地の村は特に外部からひとを入れないように厳しいロックダウンを続けていたため,カナダ在住者も話者との調査はまったくできない状況が続き,今も状況に変わりはない。zoomなどのビデオ通話を利用しての調査も検討したが,時差が大きいこともさることながら,音声の調査に耐えうる通話品質にはならず,断念せざるを得なかった。 しかし,この機会を利用し,代表者・渡辺はこれまで収集してきたデータの整備および精査を続け,さらに,アクセント体系も含め,音声的に非常に複雑なことで知られるセイリッシュ語族のスライアモン語以外の言語について,先行研究にあたり,不足する情報については,それらの言語を調査研究している海外の研究者に問い合わせ,資料を送ってもらったり,議論をおこなった。研究協力者のショー氏との議論も踏まえた成果の一部は,渡辺が論文に盛り込み,すでに提出し,現在,査読を受けている状態である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この2年度(2020年度,2021年度)は新型コロナウイルスによる未曾有のパンデミックのため,予定していたカナダ・ブリティッシュ・コロンビア州での現地調査がおこなえず,さらに,共同して研究を進める予定だった研究協力者のパトリシア・ショー氏もカナダ在住のため,お互いに行き来することができなかった。 このような想定外の状況のため,予定していた計画を大幅に変えざるをえず,予定していた進捗状況には達していない。しかし,本課題に関する研究がまったく止まってしまったわけではなく,これまでに収集してきたデータの解析を進めたり,研究対象のスライアモン語以外のセイリッシュ語族の言語について,本課題テーマのアクセントを中心に,先行研究を精査するなどしてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
海外での現地調査を研究計画の大きな柱として予定していたため,いまだにおさまらない新型コロナウイルスによる世界的パンデミックが,本課題を進める上で,大きな障害となっている。今年度(2022年度)は,現在のところ若干,状況が改善してきているようであるので,調査地であるカナダの村が外部者が入ることを認めるようになり,話者との調査ができるようになることを期待している。 もし今年度も現地調査をする機会が得られないままであれば,手元にある過去に収集したデータに基づく研究をせざるをえない。海外在住の海外研究者との共同研究として本課題は立案したが,従来のようにお互いが行き来できる状況ではないために,この点でも予定を変更しなくてはならない。連絡はこれまでも定期的に取り合ってきたので,最善の方法を協議しつつ,成果をまとめるべく研究を続けていく予定である。
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Causes of Carryover |
この2年度(2020年度,2021年度)は新型コロナウイルスによる未曾有のパンデミックのため,予定していたカナダ・ブリティッシュ・コロンビア州での現地調査がおこなえず,さらに,共同して研究を進める予定だった研究協力者のパトリシア・ショー氏もカナダ在住のため,お互いに行き来することができなかった。そのため,渡航費・招へい費,および現地調査のための旅費や協力者への謝金が発生しなかったため次年度使用額が生じた。今年度(2022年度)はコロナ禍の状況が改善することが期待されるので,これらの費用が必要になると考える。
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Research Products
(2 results)