2022 Fiscal Year Research-status Report
スライアモン語のアクセント研究の新展開―母語が異なる研究者による共同研究の試み
Project/Area Number |
19K21627
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
渡辺 己 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (30304570)
|
Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
|
Keywords | セイリッシュ語族 / スライアモン語 / アクセント / 音韻論 / 音声学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は,カナダで話されている北アメリカ先住民諸語のうちのセイリッシュ語族に属するスライアモン語について,特にいまだに解明されていないアクセント体系について,調査・研究するものである。そして,現地調査で,あと数名しかいない話者から良質の録音を録りつつ,母語が英語の研究協力者とともに録音を聞き,共同してアクセントについて解明していくものである。 しかし,本課題開始以降,2020年度,2021年度は新型コロナウイルスが猛威をふるい,調査地カナダへの渡航および調査がおこなえなかった。2022年度には若干状況がよくなったものの,渡航を予定していた夏期はやはりまだコロナの影響で渡航がむつかしく,現地調査はおこなえないままであった。zoomなどのビデオ通話を利用しての調査も検討したものの,時差が大きく,調査相手の話者が高齢者に限られることもありむつかしく,言語音声の調査に耐えうる通話品質を得ることもむつかしく断念せざるを得なかった。 渡航できないこの期間を利用し,代表者・渡辺がこれまで収集してきたデータの整備および精査を続け,さらに,アクセント体系も含め,音声的に非常に複雑なことで知られるセイリッシュ語族のスライアモン語以外の言語について,先行研究も踏まえた研究を進めた。アクセントと関係が深い音節構造についてもあらためて考察し,非公式な場で研究者に対して報告をおこない議論した。 これらの成果の一部は2022年度内に1件刊行され,さらに2023年度に少なくとも2件が刊行されることが決まっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に引き続き2022年度も長引いた新型コロナウイルスによる世界的未曾有のパンデミックのため,予定していたカナダ・ブリティッシュ・コロンビア州での現地調査がおこなえず,さらに,共同して研究を進める予定だった研究協力者のパトリシア・ショー氏もカナダ在住のため,お互いに行き来することができなかった。 このような想定外の状況のため,予定していた計画を大幅に変えざるをえず,予定していた進捗状況には達していない。しかし,本課題に関する研究がまったく止まってしまったわけではなく,これまでに収集してきたデータの解析を進めたり,研究対象のスライアモン語以外のセイリッシュ語族の言語について,本課題テーマのアクセントを中心に,先行研究を精査するなどしてきた。 特にアクセントの単位となる音節について,セイリッシュ語族に関する先行研究を精査し,スライアモン語にも照らし合わせて研究を進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
海外での現地調査を研究計画の大きな柱として予定していたため,新型コロナウイルスによる世界的パンデミックがおさまらなかったことは,本課題を進める上で大きな障害となっている。2023年度は,渡航に関する状況がほぼパンデミック以前に戻ってきたので,調査地現地との連絡を取りながら,状況を見つつ,現地調査のため渡航する予定である。 現地の事情・状況などで現地調査ができないとしたら,手元にある過去に収集したデータに基づいて,できる限りの成果が出るようにする。海外在住の海外研究者との共同研究として本課題は立案したが,これまで従来のようにお互いが行き来できる状況ではなかったために,十分な議論ができなかったが,今年度は実際に会って議論を深める機会を設ける予定である。 最終的には本課題で得た知見を成果としてまとめ,より大きな研究へとつなげる可能性を探る予定である。
|
Causes of Carryover |
2022年度も新型コロナウイルスによる未曾有のパンデミックが収束せず,そのため予定していたカナダ・ブリティッシュ・コロンビア州での現地調査がおこなえなかった。さらに,共同して研究を進める予定だった研究協力者のパトリシア・ショー氏もカナダ在住のため,お互いに行き来することができなかった。そのため,渡航費・招へい費,および現地調査のための旅費や協力者への謝金が発生しなかったため次年度使用額が生じた。幸いカナダへの渡航・入国は状況が改善し,調査地の村にも入れるようになったため,この状況が続けば2023年度は渡航と調査および研究協議ができると期待されるため,これらの費用が必要になると考える。
|
Research Products
(1 results)