2019 Fiscal Year Research-status Report
トンガ語幼児発話コーパス構築と母語獲得研究への活用及び少数言語継承への影響の考察
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19K21634
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
大塚 祐子 上智大学, 外国語学部, 教授 (30794474)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大滝 宏一 金沢学院大学, 文学部, 准教授 (50616042)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 母語獲得 / トンガ語 / 自然発話コーパス / オーストロネシア諸語 / VSO言語 / 能格言語 |
Outline of Annual Research Achievements |
トンガ語(オーストロネシア諸語)は、基本語順がVSOである(日本語に直訳すると「読んだ花子が本を」の順)、目的格を持たず他動詞の主語が特別な格を持つ(直訳すると「花子に本が読んだ」のような形)など、類型論的に珍しい統語上の特徴を持つ。母語獲得の分野でこうした特徴を持つ言語を対象とした先行研究は限られており、従来構築されてきた仮説がこれらの言語によっても立証されるか否かに関心が集まっている。特にトンガ語に関しては自然発話データを基にした研究は未だ例を見ない。本研究の目的は、まず、こうした研究の根拠となるトンガ語の幼児発話コーパスを構築すること、次に、構築したコーパスを用いて母語獲得研究の仮説を検証することにある。トンガ社会では近年、英語の影響によって言語移行が起きつつあることが懸念されることを踏まえると、本研究は言語維持の観点からも重要な役割を果たすことが期待される。 初年度は、現地協力者(トンガ教育訓練省幼児教育課職員)との話し合いを踏まえて今後の研究計画の見直しと詳細の調整を行い、来年度以降の研究活動の基盤作りに努めた。研究対象者は、両親がモノリンガルのトンガ語話者で、日常的に英語に触れることのない環境にあることを条件としているが、首都のあるトンガタプ島ではそのような家庭を見つけることは困難であり、離島在住の家庭を探す必要があることが指摘された。漠然と懸念していたトンガ語の脆弱化が現実としてつきつけられた形となり、このことを受け、限られた期間内でより充実したデータ(特に子供の発話データ)を収集・分析するために、録画開始年齢を子供自身の発話がほとんどない1歳半ではなく、2歳半ないしは3歳程度に変更することも決定した。現地協力者の尽力で対象家庭と離島におけるリサーチアシスタントの選考も済み、次回フィールドワークで研修の実施と録画を開始する準備を整えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は1歳半からのデータ収集を目指した計画を立てていたが、対象家庭の選考に時間がかかり、フィールドワークが予定通り実施できなかったため、データ収集が開始できなかった。対応策として、開始年齢をずらすことで研究期間内に必要なデータの収集が行えるように調整した。今後のワークフローも確認済みなので、次回フィールドワークから順調な進捗が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度はフィールドワークを実施し、リサーチアシスタントの研修を経てデータの録画を開始する。同時にCHAT(Codes for Human Analysis of Transcripts)を用いた録画データの書き起こしを担当するリサーチアシスタントの研修も行い、順次書き起こし作業にとりかかる。
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Causes of Carryover |
研究対象者の選出に際して想定外の事態が起き、今年度中に予定していたデータ収集が開始できなかったため、必要な備品の購入や予定していたフィールドワークが実施できなかった。次年度は新たに研究分担者を一人追加するため、備品の購入に加え、フィールドワーク、打ち合わせ等に新たに必要になる費用に充当する予定。
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