2020 Fiscal Year Research-status Report
Basic research for sharing of "Kojiruien" and analysis of modern classical science
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19K21640
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
相田 満 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (00249921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 奨治 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (20248751)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 古事類苑 / 無窮会図書館 / 井上頼国 / 器用部 / 青空文庫 / 全文テキストデータベース / 典籍調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度の研究は以下の通り(番号は計画に対応) A.『古事類苑』の特性を生かしたデータベースの模索:(1)『古事類苑』中の漢文返り点に挟まれた語句に着目し、既存辞書にない「要語」の評価を行うための基礎作業を前年度に引き続いて行った。具体的には、仏教語や有職故実語辞典の見出し語と解説文中の要語のそれぞれに人物・地名・作品名等の属性を付し読みとともに記録したエクセルデータの作成を行った(上下関係語約38,585組)。次段階では『古事類苑』中の要語とも連関する巨大な類語辞書の資源として、新たな知識体系ナビゲートする汎用辞書を構築を予定している。(2)『古事類苑』本文中に埋め込んだ暦日情報付タグを確実に有効活用するために、既存データの再点検を行った。 B.全文の継続的・効率的入力方法の模索:研究分担者・山田は『古事類苑』「器用部」のOCR入力を試み、現状技術で費用軽減が果たせるかを試みた。データ量が膨大かつ版組・字種が複雑なので、複数種の手法を試みて最適な作業効果を判断するための予備調査となった。 C.『古事類苑』本の析出と解明:『古事類苑』全引用書から原典本文との比較が可能なものを分析することで、編纂委員等による校訂の具体相を析出するため の前段として、国会図書館蔵の『古事類苑稿本』と無窮会図書館蔵『古事類苑 見本』(存法律部三冊)を比較、両者に異同のないことを確認した。さらに現行本との比較を進め、その成果の発表を行った。なお、もう一本が蔵される神宮文庫が、コロナ禍と文庫改装で閲覧不可となって調査出来ず、その状況は現在まで続いている。 D.『古事類苑』の成立と関係の深い井上頼国蔵書を擁する無窮会図書館神習文庫の蔵書整理を再開した。これにより、入力された蔵書目録と原本との突き合わせが可能となり、研究期間内には相当部分の点検が終わることと予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍による移動制限により古事類苑稿本が蔵される神宮文庫や、古事類苑の編纂目的の1つであったと想像される神官養成所の役割を果たしていた「長崎県皇典講究分所」への調査が実施できなかったため、資料の収集に支障が生じてしまったことが最大の理由である。 しかしながら、幸いに『古事類苑』の全冊の校正を担当したと謳われた井上頼国所蔵本の調査を進めて『無窮会図書館神習文庫目録』の電子データとの突き合わせが行えるようになったことは、『古事類苑』全引用書との対照研究となる点で快挙であった。 そのことは望外の成果ともいえるので、全体的には研究の確実性を向上させる点で、順調な成果を挙げつつある。 なお、研究当初に予定していた青空文庫形式の実践については、①漢字字種をJIS漢字内に収めることと、②誤字まで含めた点で原文通りの純粋な記述を行う方針を遵守するという点で、『古事類苑』自体の研究を発展させる上で障害にしかならないことが明確になってきた。そのため、青空文庫形式ルールを踏襲する事は現実的でないとの結論に至った。テキスト形式への互換性の確保とともに、研究担当書画が長年構築してきたSGML形式の発展系とも言えるKOKINルールの改良版による入力の行いやすさと可読性の確保を生かしつつ、変換ルーティンを確定させることで全文テキストの構築を進める方針が最適、そのことの評価を得るためのテキストモデルを作成することで研究のまとめとする方針を立てている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究当初に予定していた青空文庫形式の実践は、日本語TEIについての動向を見すえつつ対応を進めているが、前項で述べたとおり、組版形式への対応に優れている青空文庫のメリットは生かしつつも、JIS第1・2水準漢字以外の漢字を文章で記述するという青空文庫のルールに倣うことは、外字があまりに多すぎて現実的でないと判断した。そのため、すでにUTF-8対応で青空文庫形式に対応するツールが普及している現実を踏まえて、厳密な外字記述ルールに則った青空文庫テキスト形式の記述法は採らないで、UTF-8に拠るテキスト形成を行うことで、『古事類苑』のモデルデータとして提供することとして、準備を進めている。 なお、研究担当者には長年蓄積されてきたKOKINルール改良版によるテキスト形式の蓄積がある。この形式は入力が青空文庫形式よりも容易で、かつ可読性の良さと、それに伴う誤字訂正の行いやすさという大きな利点がある。足りない点は組版を行うに際して、それに適合するツールを欠いている点だが、そうした可読性の確保を生かしつつ、変換ルーティンを確定させることで全文テキストの構築を進める方針を採ることが最も現実的と判断した。そこで、この方法の評価を得るためのモデルテキストを作成することで研究のまとめとすることを基本方針としたい。なお、『古事類苑』テキストの入力方法については、既著『和漢古典学のオントロジモデル』(相田満,勉誠出版,2007)に詳説した。さらに今後は、『古事類苑』の本文分析をさらに深めるためにも、『古事類苑』の原典となった典籍と『古事類苑』の記述の比較をさらに進めることで最終年度の成果の一環としたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により都外への出張が一切叶わず、実地調査に大幅な支障を生じることとなった。また、同様の理由で予定していたデータ入力や撮影作業についても実施することが出来なかった。そのため残額の執行は次年度に持ち越すことになった。 ただし、無窮会図書館のデータ整備が進んできており、『古事類苑』に使用された原本と、『古事類苑』編者の意図的な記述内容の改変については、より具体的な説得力を以て示すことが可能になってきた。その成果を表記するためにも、本データの作成フォーマットの実現は有効であるといえ、その成果の一端を最終年度で示す予定でおり、そのための専用ホームページの作成を進めているが、現段階では文字エラーのチェックが進行中で、公開を果たせないでいる。
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Remarks |
(1)-(3)ともに、これまでの全文データの蓄積を下にデータベースが構築されるているが、いずれも同一仕様によるテキストデータをマスターデータとして、それぞれの検索システムや表示形式(縦書X-Html)に検索システムに変換されたデータを搭載している。 また、山田は入力の効率化を図るため、OCRを使用した入力に取り組んでいる。
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Research Products
(6 results)