2019 Fiscal Year Research-status Report
奄美群島の戦争に関する「記憶」の記録と継承をめぐる学際的研究
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19K21652
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
兼城 糸絵 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (40709482)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 智子 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (40624359)
佐藤 宏之 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (50599339)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 戦跡 / 戦争体験 / 奄美群島 / 記憶の継承 / 活用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、奄美群島の戦争関連遺跡(以下、戦跡とする)を対象に、島嶼部で経験された戦争がいかなるものであったかを検証し、戦争体験を継承していく方法論を考古学・文化人類学・歴史学の立場から協同構築することである。本年度は(1)鹿児島県大島郡瀬戸内町を中心に戦跡の踏査、および(2)戦跡に関する語りの収集、そして(3)戦跡の「活用」に関する調査を実施した。 瀬戸内町は、奄美群島の中でも数多くの戦争遺跡が存在する地域として知られている。今年度は特に加計呂麻島と瀬戸内町古仁屋地区を対象に調査を実施した。すでに刊行されている報告書を参考にしながら、古仁屋地区および加計呂麻島に残された戦跡の現状について調査を実施した。また、戦跡の「活用」の一側面として戦跡観光という形態があげられるが、瀬戸内町内での戦跡観光の現状やガイドによる戦跡案内の実態についてもデータを得ることができた。さらに、加計呂麻島では島で戦争を体験した方々から戦中・戦後のようすについて貴重な証言を伺うことができたが、まだ質・量ともにデータが不足しているため、今後も継続して聞き取り調査を行う予定である。 今回最も大きな収穫となったのは、地元の高校生による近現代文化遺産の継承活動に参与できたことである。これは、高校生が地域の過去を小学生に伝えようと企画されたイベントであったが、戦争を知らない世代が戦争のことをいかに後世に継承していくかという問題を検討する上で、ひとつのケーススタディとなりうるものであった。この点については今後論文にして発表していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
7月から研究をスタートさせたものの、概ね順調に進んでいると考えている。 当初の計画どおり、奄美大島南部地域の戦争遺跡に関するデータを収集することができた。また、九州考古学会にてポスター発表を行い、有益なアドバイスも得ることができた。ただし、新型コロナウイルスの感染拡大をうけて、3月は十分に調査ができなかった。特に、聞き取り調査については課題も残された。この点については今後継続して調査をしていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は喜界島を調査地として、戦跡の現状把握調査と戦争体験に関する聞き取り調査、そして地元で行われている継承活動に関する調査を行う予定である。しかし、現在新型コロナウイルスの流行を受けて来島自粛が要請されている。状況が改善され次第現地調査を行いたい。また、2019年度に得たデータの整理を進めているところであり、それがまとまり次第論文にして発表することを予定している。
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Causes of Carryover |
当初の計画ではSfM(Structure from Motion)を使って戦跡を記録しその成果を地元住民に公開していく予定であった。その後議論を重ねる中で、三次元データをVRシステムで体験してもらう方法がより効果的だと判断したため、SfMに使用する予定だった機材の購入を見送った。 また、今年の3月頃より新型コロナウイルスが感染拡大し始めたこともあって、年度末に予定していたワークショップを中止にした。よって、研究費の一部を執行することができなかった。 次年度は新型コロナウイルスの感染拡大の動きを注視しつつ、出張が可能になり次第早急に調査を再開し、機材の購入もすすめていきたい。
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