2020 Fiscal Year Research-status Report
Study of Ibn Sina's Qanon of Medicine: As a basis for comparison of Eastern and Western Herbalism
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19K21653
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Research Institution | Chiba Institute of Science |
Principal Investigator |
橋爪 烈 千葉科学大学, 薬学部, 講師 (10613862)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | イブン・スィーナー / 医学典範 / アラビア語医学書 / アラビア語薬学書 / Islamic Medicine |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年2月末以降の、新型コロナウィルスの世界的蔓延の状況を受け、研究活動、特に海外の図書館での写本調査の作業が一切できない状況となった。このため、『医学典範』写本の調査が完全に停滞している状況である。よって、2020年度の研究実績は限られたものとなった。 まず、初年度の実施状況報告書に記したManfred Ullmann著Islamic Medicineの翻訳書刊行について、出版社を通じて翻訳権の取得を目指していたが、原著の出版社もこの感染症蔓延状況のため、対応ができなかったのか、1年ほどかかり、2020年の年度末になってようやく連絡が取れ、翻訳権取得の方向に進みだした。この間、訳文の見直しや医学・薬学用語の確認等の作業を行っていたが、来年度(2021年度)には同書の翻訳書を出版できる見込みとなった。 続いて、新たな史料収集や写本調査ができない状況であったため、2019年度までに収集した『医学典範』写本史料やその英訳書、注釈書の整理、構成の把握、あるいは『医学典範』テキストに存する各種の問題点の抽出などの作業を行い、この成果の一部について、2021年2月9日、早稲田大学総合人文科学研究センター主催の研究報告会「中世アラブ・イスラーム史研究の最前線」において、報告し(報告題目「アラビア語医薬文献・本草学文献研究の可能性について」)、現状把握しうる限りの『医学典範』写本や刊本、英訳書の抱える問題点を指摘し、今後の研究の方向性を提示した。 最後に、2020年度の中心作業は『医学典範』の刊本(全5巻)を紐解き、構成の把握となったが、この成果については作業中のため、公表できる状態には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、『医学典範』写本を所蔵する海外の図書館、特にトルコ共和国イスタンブル市にあるスレイマニイェ図書館、イギリス国ロンドン市にある英国図書館、同オックスフォード市にあるボードリアン図書館等での写本調査が全くできない状況にあるため、調査が進まず滞っている状況である。 また2020年度は上記感染症対策として、大学での研究活動や講義の在り方に関して新たな対応が求められ、その準備・対応に追われたため、研究にまとまった時間が取れなかった。このため、2020年は研究費の執行額ゼロとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの蔓延・終息状況次第であるが、渡航、現地での調査活動が可能になり次第、トルコ共和国イスタンブル市にあるスレイマニイェ図書館での写本調査を行い、遅れを取り戻す必要がある。 それが叶わない場合、現状手元にある写本及び刊本を用いて、『医学典範』の構成把握および写本間、テキスト間の異同の調査、また西欧に伝わったとされる『医学典範』のテキストと東方で伝世したと思われるテキストの比較検討など、国内で可能な作業を進める。 特に現行のテキストの内、インドで出版された刊本の入手を急ぎ、従来用いられているブーラーク版テキストとの比較を行う。このインドで出版されたテキストは、『医学典範』英訳(全5巻)の底本となっているテキストであり、『医学典範』の内容を知るに際してまず手に取られる英訳本がどのようなテキストに基づいて訳出されているかを把握することは、今後の『医学典範』研究、とくに同書の受容の在り方を明らかにする上で重要な作業と考えられるため、これを遂行する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の世界的蔓延状況を受け、トルコやイギリスでの写本調査が一切できなかったため、旅費や調査地での写本史料の複写費用にかかる支出がゼロとなった。また写本調査ができなかったため、国内での作業は基本的に手元にある史料を基に『医学典範』の内容や構成の把握に努めたが、この作業にかかる支出が発生しなかった。よって、2020年度の研究費支出がゼロとなった。2021年度については、新型コロナウィルスの蔓延状況やワクチン接種状況を考えあわせ、研究活動がどの程度可能であるかを見極めながら対応したい。年度末には海外写本調査を行い、予算を執行したいと考えている。ただし、状況により、補助事業の中断を行い、感染症の抑え込みが図られたのちに研究活動を再開することも考えている。
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Research Products
(2 results)