2019 Fiscal Year Research-status Report
古書籍に混入した毛髪の安定同位体分析による過去の食生活の推定
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19K21656
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
丸山 敦 龍谷大学, 理工学部, 准教授 (70368033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入口 敦志 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (80243872)
神松 幸弘 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 助教 (20370140)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 江戸時代 / 同位体分析 / 毛髪 / 書籍 |
Outline of Annual Research Achievements |
龍谷大学大宮図書館の協力を得て、所蔵する70,000冊ほどの和装本(江戸時代初期から明治時代末までに版木を用いて印刷発刊された板本)について、古紙再生厚紙に漉き込まれている毛髪が摘出可能であるかの調査を行った。その上で、およそ四分の一の書籍setにおいて、書籍を実質上改編することなく、刊行記録との紐付けが確かな毛髪試料を得た。このうち、統計学的な独立標本として扱え、同位体分析に十分な総長に至ったものは253 setとなった。書誌学的な鑑定を行って、刊記の信憑性についても判定した。炭素と窒素の同位体分析を行った結果、都市間の食生活の違いや、江戸中期と後期、明治時代にかけての食生活の変化などが浮き彫りとなる統計検定結果が得られた。これらの結果は、われわれの論文(Maruyama et al 2018 Scientific Report)が示した傾向を膨大なデータで裏付けた上で、新たな知見を付加するものである。 一方で、現代人の毛髪を老若男女から集めることで、リファレンスデータを揃えることも進んでいる。龍谷大学の「人を対象とする研究に対する倫理審査委員会」より事前承認を得た上で、京都、大阪、東京の順に十分量の試料が収集されつつある。 また、食生活の変化の農業の変化を分離する試みとして、毛髪以外の試料(詳細は現段階では研究上の機密)の収集と活用の模索を始めている。かつ、当時の農業を模倣する形での検証実験(施肥、品種を再現した上での稲作実験)も、京都市大原野で協力者を得て進行しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた毛髪の収集はすでに完了しており、かつ、同位体分析も大方を終えている。江戸時代の毛髪のPIXE分析を試みたり、毛髪以外の試料(詳細は現段階では研究上の機密)の収集と活用の模索を始めるなど、計画以上の成果が見られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
毛髪のPIXE分析、毛髪以外の試料(詳細は現段階では研究上の機密)の収集と活用などについて、すでにパイロット的な活動を進めながら、本格的な導入を模索している。急速な推進を目指しつつ、COVID-19関連の動向次第では研究期間延長を含めた捜索を考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、同位体分析において、事前調査によって試料を厳選できたこと、分析を圧倒的に効率化できたことにより、ランニングコストを当初予定よりも削減することに成功したためである。この次年度使用額は、前述のとおりに薦めている、発展的な実験や分析に投入することで、研究の学際的な萌芽をさらに促進する予定である。ただし、COVID-19による研究の遅延は不可避であり、情勢によっては研究期間の延期による解決も検討する。
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Research Products
(4 results)