2022 Fiscal Year Annual Research Report
古書籍に混入した毛髪の安定同位体分析による過去の食生活の推定
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19K21656
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
丸山 敦 龍谷大学, 先端理工学部, 教授 (70368033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入口 敦志 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (80243872)
神松 幸弘 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 准教授 (20370140)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | 江戸時代 / 同位体分析 / 毛髪 / 書籍 / PIXE分析 / 食生活 / 文化財建造物 |
Outline of Annual Research Achievements |
江戸時代前期から明治末までに版木を用いて印刷された板本(和装本)253部から漉き込まれた毛髪を得て、炭素・窒素安定同位体分析を行った 2019年度の実績、リファレンスデータを揃えるために現代人の毛髪を老若男女から集めた2020年度および2021年度の実績を踏まえ、2022年度は、同位体分析を補完する目的で導入したPIXE分析を軌道に乗せた。μPIXE分析を行った量子線医学研究所への入講制限は緩和され、論文執筆に向けた本格的な統計解析に着手できる分析数を集めるに至った。 一方で、食生活の変化と農業の変化を分離する試みとして、ヒトの主食であったコメの化学的変化を復元するための試料の収集を本格化した。とくに、京都府文化財保護課などの協力を得て収集された、江戸時代初期から昭和前半にかけて京都周辺で刈り取られたと推察されるイネ試料は既に充実しており、毛髪分析から生じた対立仮説を検証する分析の材料として期待される。材料固有の洗浄・前処理・分析法を確立するため、同位体分析の試行は既に始めており、PIXE分析についても東京都市大のオーデナリPIXEが使える運びとなった(検出器修理・調整の必要から、半年ほど待機中)。 以上の活動により分かったことは、当初計画以上に学際的である。すなわち、窒素同位体比は江戸時代を通じた海への依存度の上昇、炭素同位体比はC4植物への依存度の上昇を明らかにしたほか、PIXE分析で定量される多種の微少元素含有量は、江戸時代よりも現代において小さいことが示された。歴史学や自然人類学はもとより、栄養学や土壌学にも刺激しうる知見が見いだされつつある。コロナ禍の収束とともにこれら複数の学問分野の専門家との意見交換・議論も進められた現在は、影響力の強い論文を仕上げるべく、執筆作業に集中している。総じて、研究期間の再延長が、十分に活かされる結果となった。
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Research Products
(4 results)