2019 Fiscal Year Research-status Report
Do Asian Traditional Calendars Predict Extreme Weather Events?
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19K21663
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古澤 拓郎 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (50422457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小谷 真吾 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (90375600)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 異常気象 / 伝統文化 / 暦 / インドネシア / MODIS / 植生変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
アジア各地の社会が独自にもってきた伝統的な暦は、生業のために季節変化をあらかじめ知ることに役立てられてきた。そのため伝統暦は、西暦グレゴリオ暦では予知することができない「異常気象」への適応に役立てられるという意見があるが、科学的に検証した研究はない。そこで本研究は、アジアの伝統暦を収集・分析し、同時に人工衛星画像解析を元にしてそれぞれの地域の時系列的な植生変化・気象変化を分析することで、グレゴリオ暦と伝統暦のどちらがより正確に異常気象を予知できるか、算出を試みることを目的とする。 平成31年度は月数も日数も固定されず、天体や自然の変遷に基づいて暦を決定しているスンバ島西部の暦を取り上げた。伝統的な暦では、ポドゥという大儀礼をする時期に雨季が開始するか、ニャレ・パソーラという別の大儀礼をするときにゴカイ類の生殖群泳が起こるかが重要なチェックポイントになっている。 全地球をほぼ毎日衛星観測しているMODISデータを「状態空間モデル」で時系列解析した。スンバ島西部は、雨季と乾季の開始時期が毎年大きく変動するため、生のデータではポドゥの季節、ニャレ・パソーラの季節に特徴は見いだせなかったが、毎年の季節周期だけを取り出すと、それぞれ植生の転換期と一致することが解明された。この両儀礼の時期は平年の雨季パターンを観測するのに適しており、異常気象の年は、平年とのずれを把握することができると考えられる。 東南アジア広域で分析をするために、暦調査の体制を整え、衛星画像解析分析技術の研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行研究の収集分析を進め、現地研究者との連携を深め、空間解析企業との打ち合わせを行い、さらに一地域については詳細な解析結果を出すことができた。しかし、インドネシアにおいて暦や儀礼の重要な時期であり1-3月に現地調査を予定していたところ、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、結局現地調査が不可能となった。 SNSを通じて現地情報を得るなどして、研究を進めたが、やや遅れた出たことは否めない。
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Strategy for Future Research Activity |
これからは毎年の月数が規則的に変わる暦(バリ・サカ暦など)、毎月の日数が規則的に変わる暦(ジャワ・プラノトモンソ暦など)、月数も日数も固定されない暦(スンバ島暦など)といった対照的な伝統暦を取り上げ、西暦グレゴリオ暦と比較的に分析する。MODISデータの時系列解析して、例年通りの規則的な植生変化と、稀な異常気象を抽出した結果と比較する。 新型コロナウイルス感染症の拡大は、調査計画に影響を及ぼしているが、これからの調査は、SNSなどオンラインでの調査手法や、衛星画像解析技術の開発、および文献の蒐集により、順調に進める。 伝統暦の科学的検証が可能か、どれほど正確なのかは未知・未踏な挑戦的な領域であるが、その結果が得られれば異常気象に悩む世界中の生業社会の課題解決につながることを目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により、予定していた現地調査が中止になり、旅費とそれにかかわる諸費用が次年度使用となった。 衛星画像の購入と解析、資料の蒐集と分析に関する費用として使用し、現地調査に変えて、調査の進展を行う。
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