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2023 Fiscal Year Research-status Report

A Social and Cultural Analysis of "Post-Truth" as Epistemology

Research Project

Project/Area Number 19K21667
Research InstitutionKyushu University

Principal Investigator

太田 好信  九州大学, 比較社会文化研究院, 特任研究者 (60203808)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 杉山 あかし  九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (60222056)
Project Period (FY) 2019-06-28 – 2025-03-31
Keywordsポスト真実 / 権威主義的パーソナリティ / UFOアブダクション / 陰謀論 / 認知と情動
Outline of Annual Research Achievements

本(2023)年度、分担者はアメリカ合衆国でのアンケート調査を実施した。現在、解析を進めている。また、代表者が計画していたアメリカ合衆国における現地調査がコロナ禍の影響を受け、実施困難な状況が続いた。その代替調査として、本(2023)年度は、9月下旬と11月下旬、2度、関西地方で活動しているUFOに興味をもつ集団として長い活動期間をもつ「A団体」の参与観察調査をおこなった。アメリカ合衆国でのアインケート調査の結果と対比するため、日本でもポスト真実が顕著に現れる事例として「陰謀論」者の言説を比較するためである。
本年度の調査から、以下の3点が明らかになった。まず、A団体の参加者には強い仲間意識が醸成されていたこと。UFOなどについての関心は、しばしば誤解の原因ともなり、人間関係の悪化を招くという。語ることが許されない自己は、A団体のなかでは、自由に語ることが許されており、解放感をもつようであった。
次に、発表者の体験談は個人のアイデンティティ形成の一部となり、自らが経験した奇妙な出来事をどう意味づけるかという課題を通し、語りの当人が自らの生の意味を捉えなおすという(実存的)作業に特徴があった。当人にも偶然と捉えられていた出来事の連鎖が、過去を振り返えることにより、意味をもつ符号に変容し、いつしか因果関係をも含意するようになっていった。物語の一貫性を求める陰謀論と論理構造として類似している。これは、ある種の宗教的経験と類似している。
最後に、政治的なニュアンスを避けられない陰謀論は、参加者にとっては情報の一部にすぎず、それについての判断は「相対的」(「信じるかどうかは、あなたしだい」)であり、けっして集団内部に強い圧力を感じることはなかった。上記の一貫性を求める物語構造のほかに、陰謀論とは隠された事象を知るという自己の特権的、優越性という類似点もあることが判明した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

2023年度も、コロナ禍の影響があり、研究計画の一年延長を余儀なくされた。しかし、2024年11月には米国大統領選挙があり、前回の大統領選挙との間で米国社会の変化を見据え、この4年間において「ポスト真実」がどのような社会的影響を与えたのかを把握する機会もえた。
二つの暫定的結論に至った。第一に、これまで、「ポスト真実」を認知領域の問題として論じてきたことへの反省である。たとえば、本研究では「ポスト真実」を社会心理学的諸概念(認知バイアス)や権威主義的パーソナリティ論にからの分析を試みてきた。「ポスト真実」は、正常な認知が阻害され、逸脱が起きているという前提があった。
しかし、分担者のアンケート調査、ならびに代表者による文献や現地調査から、「ポスト真実」と陰謀論やアブダクション経験者たちの語りとの関係を検討すると、「ポスト真実」を認知領域の問題と捉えるアプローチには限界があるのではないか、と疑念を抱くようになった。
2023年度の研究では、認知領域の問題として扱うことから、排除してしまった領域は何か、とあらたに問うことにした。分担者のおこなったアンケート調査からも明らかだったが、現状への不満や「犠牲者として語り」は、感情の表出をともなっていたことだ。「米国の民主主義を信じていたが、裏切られた」、「ワクチンは製薬会社と国家とが共謀し、貧困にあえぐ人びとを実験材料にしている」という陰謀論には、裏切り、嫌悪、嫉妬など、感情表現に満ちていた。
「ポスト真実」は、グローバルな現象といえる一方で、同時にローカルで個別な歴史、ならびに社会状況と節合し、独自の形態をとっている。たとえば、日本のアイヌに対するヘイトスピーチなど。2023年度、「ポスト真実」を分析対象とする場合、情動(憤怒、嫌悪、嫉妬など)領域の問題をも焦点化するべきだという暫定的結論に至った。

Strategy for Future Research Activity

2024年度は、最終年度である。「ポスト真実」と近年顕著になりつつあるほかの諸現象(たとえば、キャンセル・カルチャー)との比較、ならびに2023年度に暫定的結論として示した「ポスト真実」の情動的側面に関する分析を継続する。「ポスト真実」という現象が一過性の政治現象ではなく、社会の諸現象と節合し、拡散、変容することから、もはや認知領域での異常、逸脱ではなく、情動からエネルギーを吸収し、肥大化する社会現象と位置づけるべきだろう。情動が重要な要因であるのは、「ポスト真実」とは、自由という概念が歴史や社会的制約から解き放された解放感に連なっているからである。自由を抑圧するのが、1980年代後半のPC(ポリティカル・コレクトネス)であり、現在ではキャンセル・カルチャーだという風潮が広がりつつある。
一方で、分担者は2023年におこなった米国でのアンケート調査の結果について、独自に分析を進めている。他方において、代表者は実地調査を継続する。とくに、陰謀論の特徴である出来事の関連(連鎖)への執着、ならびに(自分だけが知っているという)「特権的視点」などが、「ポスト真実」の背景にある情動的要因と関連しているのかどうかを調査する。
以上、分担者と代表者との「ポスト真実」に対するそれぞれ異なったアプローチから、「ポスト真実」を捉えなおす機会をつくる。これまでよりも、「ポスト真実」をより広く、認知と情動とが相互に働きかける現象と捉えなすことにより、今後、認知バイアスなどの社会心理学的なアプローチだけではなく、情動を媒介にし、本来ならば政治的見解の対立として理解されうるような諸問題(マイノリティ、障がい者、在日外国人、LGBTQ+へのヘイトスピーチなど)も、「ポスト真実」に帰属する現象と再認識することが可能になる。問題の解決よりも、変化する現象をどう捉えなおすかという問いの立て方を示したい。

Causes of Carryover

コロナ禍による影響を受け、海外調査が困難となったが、1年間研究を延長することにより、2024年米国大統領選挙の結果を視野に入れた分析をおこなえるよう、研究計画の見直しをおこなったため。

  • Research Products

    (2 results)

All 2023

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results) (of which Invited: 1 results)

  • [Journal Article] 変容する脱植民地化の影響と脱中心化した文化人類学 いま、対話を捉えなおす2023

    • Author(s)
      太田 好信
    • Journal Title

      文化人類学

      Volume: 88 Pages: 417-434

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 変容する脱植民地化の影響と脱中心化した文化人類学 いま、対話を捉えなおす2023

    • Author(s)
      太田好信
    • Organizer
      第57回日本文化人類学会研究大会(第18回日本文化人類学会賞受賞講演)
    • Invited

URL: 

Published: 2024-12-25  

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