2019 Fiscal Year Research-status Report
Towards Constructing a Housing Safety Net based on Service Hubs for Work, Housing and Welfare
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19K21668
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
水内 俊雄 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 教授 (60181880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 拓也 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (70622067)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | サービスハブ / 中間ハウジング / セーフティネット / 社員寮 / 就労支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
4つの調査対象を設け、それぞれにおいて研究代表者、分担者、研究協力者の配置により調査の分業を行った。それぞれの調査対象と調査実施内容については、利用層の労働稼動力の高低と、ハウジングを介した支援の多少でできる4象限マトリックスで、4つの利用者増の象限が配置されるモデルに従っている。この象限毎に調査内容を概述する。 第1にⅠ象限(稼働力高、支援少)については、初年度の最大の取り組み課題であり、アウトカムとしては職住一体化した(請負派遣)社員寮のサービスハブ化を通じた社会化の実態をアンケート、ヒアリング調査で明らかにした。半数近くが不安定居住状態からの一時的避難であり、経営者側も一部に生活支援という意識をもって対応していることが判明した。また大阪の飯場について昨年度末の広告分析も行い、紹介されるサービスの類型を明らかにした。 第2に、Ⅱ象限(稼働能力高、支援要)や、Ⅳ象限(稼働能力低、支援少)に位置する層への社会的就労をセットにしたセーフティネットの検証である。前者については、生活困窮者時・ホームレス自立支援システム、すなわち新しい一時生活支援事業のチェックとなった。利用者の入口調査を行ったが、設計上短時間での回答となったため、調査項目を絞り込み、不安定居住と仕事の相関などを見ることとした。結果として、ネットカフェや24時間営業の店、社員寮や飯場での経験が複数回答であるとはいえ、いずれも3分の1強を占めることがわかった。不安定居住と仕事の結びつきが結構高いことが判明したといえる。後者の調査は、予定通り次年度実施となっている。 第3に、Ⅲ象限(稼働能力低、支援要)については、予定通り次年度に実施する。またGISを用いたサービスハブ地域の実態解明についても、予定通り最終年度に実施する。 アウトプットについては、空間社会地理思想や都市研究プラザのブックレットにて、精力的に刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最大の着目点であった(請負派遣)社員寮への調査については、福祉の窓口から紹介していただく形をとったのが功を奏したといえる。それだけにこの福祉の窓口、具体には、一時生活支援事業のホームレス自立支援やシェルター事業、また生活困窮者の全体の相談窓口に、派遣業者のほうから求人のためにアプローチしてきたそのつなぎの事例が、著しく増えていることの反映でもあった。そのため、ある程度意識的に被雇用者のサービスを良質に行おうとしている経営体の紹介を、窓口からわれわれが受けたことになる。そのようなバイアスがあるとしても、11の会社、NPOと、住み込み紹介専用窓口を持つハローワーク、加えて盛り場の無料案内所の13ケースを扱うことができた。 利用層は大きくは3つに分かれ、2割弱がこの社員寮での就労と生活の型にはまり、長期間居住するもの、手堅く稼ぎ次の仕事に移ってゆく層、そして比較的短期に逃げてしまうことも含め、定着しない層という色分けが確認された。セーフティネットの観点からは、この最後の層に対して、スリップしたときのアウトリーチが重要となり、そうした事例をいくつか把握することができたことは、調査の成果であった。 また主に一時生活支援事業の入口調査も、事業体にバラエティを持たせながら選択することができたため、不安定居住のキャッチのされ方も、各窓口毎に個性のあるものとなった。そのために入口調査も数は多くはなかったが、有為な結果が得られたと考えている。 またこうした不安定居住層へのセーフティネットが建造環境として、ジェントリフィケーションの防波堤として役割も果たしているのではないか、という点に関し、GIS分析も多用してその実態を提示したことも、有用なアウトカムと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
最大のネックは、パンデミックの影響による社員寮調査の継続か可能かどうかである。事前のヒアリングにおいて、建設土木、警備に関わる仕事であり、サービス、観光、飲食業への派遣労働ではないため、比較的影響は少ないものと予想される。しかしながら、ネットカフェ利用の中止や抑制が直ちに一時生活支援事業が有するシェルターの利用と結びつき、ホテルの借り上げなどの措置が取られている。また給付金10万円の件で、シェルターや住民票が流動的な層のキャッチにおいて、日々業務が進行する状態ともなっている。調査実施可能性の判断を下すのは、少々先送りになることが予想されるが、社員寮経営会社への継続ヒアリングと新規ヒアリングは続けてゆく予定である。なるべく負荷の少ないネット調査も利用者から行うことも考えている。 入口調査においてさらに広範な不安定居住者をつかみ、就労、雇用との関係をこのパンデミック危機の中でつかんでおくことは大変重要である。そのためにもQRコードを用いた調査の工夫を加えることで、有為なデータを現場への負担も減らしつつ行うことを企画している。このタイプの調査は事前の設計にはなかったが、この危機状態に面して、急遽実施する計画である。 そのため、次年度実施予定であった自立支援センターなどでの就労支援の効果の調査や、優良宿泊所の日常生活支援住居施設に転換した分における居住支援の調査も、先送りを考えている。 なおサービスハブ地域の地理的なあり方の検討については、この危機において支援の体制が強化されることや、自治体や中央政府のセーフティネットに対する資金投下や堀序率の割合も変化することが予想され、重要なものとなっている。ニューノーマルの導入も考えられるので、制度全般的な調査を行い、場合によってはワークショップの開催も視野にいれている。ブックレットの刊行はアウトプットの迅速な伝達という観点で、引き続き行う。
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Causes of Carryover |
未入力
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