2019 Fiscal Year Research-status Report
「クイア」な人類学の新たな展望:フランスのホモフォビア現象をめぐる人類学的考察
Project/Area Number |
19K21669
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
國弘 暁子 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20434392)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | クイア / ジェンダー / マリアージュ / ファミリー / セクシュアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、人類学の「クイア」な研究姿勢を通じて、ゲイ・レズビアン、そしてクイア・スタディーズを「クイア」に化していく道筋を具体的に提示し、「クイア人類学」の新たな方向づけを実証することを目的として、昨年度7月から開始した。本研究に必要と思われる文献を探すことからはじめ、12月末から1月上旬にかけて、フランスのリヨンでの短期調査を実施した。リヨン滞在中、二週間という限られた時間のなかで、1)同性愛の問題に取り組むカトリック団体 “DEVENIR UN EN CHRIST (Becoming one with Christ)”にアプローチすること、2)リヨン市内でとりわけ求心力をもつサニジエ教会の行事に参与すること、3)ムスリムの同性愛のためにコミュニティ・ネットワークを形成する移民二世の男性と再会すること、これらを実施する計画を立てた。
1)同性愛の問題に取り組むカトリック団体の代表者とコンタクトをとり、活動内容に関する概要を伺った。そして、カトリックであることに重きを置いており、同性婚を勧める立場にはないという説明を受けた。さらに、再訪問した際には、団体のミーティングに参与させてもらう許可をもらった。2)リヨン市内のサニジエ教会では、司祭と面会する機会を特別に設定してもらい、カトリック教義におけるマリアージの意義について教えを受け、教会で挙式を希望する人々が必ず受講する事前勉強会のテキストを特別にいただいた。また、月曜日を除き毎日行われていた聖体礼拝の儀式にも可能な限り参与し、儀式の最中に語られるマリアージュやファミリー、そして男女のあり方の意義について、教会側の見解を把握することに努めた。3)クリスマス休暇期間中、知人のムスリム男性はリヨン市外で休暇を過ごしていた。そのため、今回は残念ながら再会は実現できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
12月末から1月頭にかけて、フランスのリヨン市内で調査を実施し、そこで構築できたネットワークをもとにして、さらなる調査を3月に行う計画を立てていた。しかし、新型コロナウィルスの拡大によって渡仏が不可能となり、3月の時点で明らかにできると見込んでいた事柄が未だ明らかにできていない状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年の3月に実施する予定であった調査を、来年の3月に実施したいと考えている。今年のクリスマス休暇期間に実施することも考えてはいるが、コロナウィルス禍の影響を受けて多くの行事がキャンセルとなること、また、人の移動も警戒されることなど、調査において不都合なことが多々起こるのではと懸念している。海外渡航の時期については、夏以降の世界状況を見て考えたい。
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Causes of Carryover |
2020年3月に計画していたフランス・リヨンでの調査を中止せざるを得なかったため、その分の旅費未使用額を次年度に持ち越すことになった。2020年度の海外渡航が実現できるか現時点では未定であるが、冬季休暇と春季休暇を利用して2度実施することを計画している。
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