2020 Fiscal Year Research-status Report
「クイア」な人類学の新たな展望:フランスのホモフォビア現象をめぐる人類学的考察
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19K21669
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
國弘 暁子 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20434392)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | クイア / ジェンダー / 人類学 / フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、人類学の「クイア」な研究姿勢を通じて、ゲイ・レズビアン、そしてクィア・スタディーズを「クイア」に化していく道筋を具体的に提示し、「クイア人類学」の新たな方向づけを実証することを目的として、2019年7月から開始した。具体的な活動内容としては、フランスのリヨン市内において同性愛であることをサポートするカトリック団体 “DEVENIR UN EN CHRIST (Becoming one with Christ)”の活動に参与すること、そして、同性愛を擁護しない立場を表明する教会側の活動に参与するという二つの柱を立てていたが、海外調査を実施することができなかなった2020年度は、(1)本研究テーマに関連する文献を集めること、(2)本研究テーマの着想を得るきっかけとなった元々の研究成果を内省する論文を執筆すること、(3)本研究の活動内容を変更する可能性を模索することとなった。
(1)文献収集においては、主にフランス地域研究、とりわけフランスの同性婚をめぐる問題に関する論文を集めた。それら論文を読むことから明らかになったのは、フランスでは「ジェンダー理論」という用語が究極的な個人主義を促すシンボルとして使われているということ、また、人類学という研究領域が「ジェンダー理論」とは真逆のポジションを占めているということである。後者については、さらに追究する必要があると考えている。(2)フランスを舞台にジェンダーの問題について再考しようとするに至ったのは、インドでの第三ジェンダー問題を扱っていたことに起因する。本研究テーマを遂行することの意義について改めて確認するために、インドにおける第三の問題を内省する論文を執筆した。(3)フランスのリヨン市在住の知人やリヨン大学関係者とコンタクトを取りながら、研究の活動内容を変える可能性を模索した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
フランスでの現地調査・参与観察が全くできない状況が一年以上も続いてしまったため。
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Strategy for Future Research Activity |
リヨン市内における特定団体や教会の活動に参与する計画を当初は立てていたが、2021年度も外国人のリヨン滞在は制限されることが予想される。そのため、現時点では、文献調査やメディア情報の分析だけでどこまでの範囲をカバーできるのかを明らかにすることに努め、さらに、2021年度以降にフランス調査が可能となる時期を想定して、リヨン大学の教員との共同研究という形で進められるよう、少しづつ対話を進めていく。
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Causes of Carryover |
2020年度の旅費(海外渡航)が全くの手付かずであったが、2021年度末までにコロナ禍が収束に向かうのであれば、海外渡航・海外調査費用として全て使用することも計画している。
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Research Products
(1 results)