2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K21679
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
西村 智朗 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (70283512)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | 科学的知見 / 予防原則 / 多数国間環境協定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究の最終年度として、生物多様性条約/名古屋議定書の下で遺伝資源のアクセス及び利益配分に関する「デジタル配列情報(DSI)」の取扱い、および②気候変動条約/パリ協定の下で気候変動に対処する上での科学的知見の役割と課題について、成果文書の検証および締約国会議への参加を通じて検討した。 名古屋議定書の下で検討されていたDSIについては、2022年にモントリオールで開催された締約国会議(COP15、NP-MOP4)において採択された決定に基づき、多数国間メカニズムを設置することが確認されたが、その成果文書の分析を行い、同メカニズムの概要と課題を指摘し、将来開催される公開作業部会での合意形成に向けて、科学的知見役割が重要となることを再確認した。併せて、2023年に採択された、国家管轄権外区域の海洋生物多様性に関する実施協定の中に導入されたDSIに関する制度と名古屋議定書との関係を比較検討した。 気候変動条約/パリ協定については、京都議定書を含めて、これまでの気候変動に関する国際制度の交渉経緯を再確認し、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が果たした役割とその重要性を再評価した。また、緩和措置に関連して、京都議定書およびパリ協定における気候工学の評価について、他の関連条約(ロンドン海洋投棄条約/議定書、生物多様性条約)と比較した。その結果、今後積極的に導入される可能性のある気候工学に対して、利用のための原則や条件などを整備するために、パリ協定およびその締約国会合決定で合意形成する必要性を指摘した。その際には、すでに国際環境法の下で基本原則として確立しつつある予防原則の再認識が重要であることを論証した。
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