2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K21683
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
福元 健太郎 学習院大学, 法学部, 教授 (50272414)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊田 恭輔 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (70865196)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 災害復旧事業費 / 選挙 / コロナ禍 / 休校 |
Outline of Annual Research Achievements |
災害復旧事業費に関する研究を進めた。前回選挙で与党の得票率が多かった市町村ほど、災害復旧事業費が多くなるのではないかと考えられる。また多くの災害復旧事業費を受けた市町村ほど、次の選挙で与党の得票率が高くなることが考えられる。以上のような分析をするためには、災害復旧事業費、与党得票率、降水量、十数個の制御変数を、市町村別及び選挙区別に整備する必要がある。1989年から2017年までのデータを整備し、分析を行ったところ、「多くの災害復旧事業費を受けた市町村ほど、次の選挙で与党の得票率が高くなる」という予想は支持されたが、「前回選挙で与党の得票率が多かった市町村ほど災害復旧事業費が多くなる」という予想は支持されなかった。結果を論文にまとめ、学術誌に投稿したところである。 2020年度に新たに生じた新型コロナウイルス感染症の蔓延は、コロナ禍とも言われるように災害である。その対策の1つとして、市町村ごとに判断する休校がある。しかし休校は、子ども達の学習の停滞や保護者達の時間的負担の増大などの短所がある。従って、休校によって新型コロナウイルス感染症の蔓延を抑える効果が、短所を上回る必要がある。しかしその効果を厳密に因果推論することは難しい。この課題は、本研究の研究目的に適うものであるので、本研究で扱うことにした。具体的には、マッチングと呼ばれる手法を用いて、休校を実施した市区町村と、それ以外の市区町村のうち休校を実施した市区町村と類似した市区町村とで、新型コロナウイルス感染症の陽性者を比較することにより、休校を行ったことが新型コロナウイルス感染症の状況に与えた因果的効果を推論する。データを集めて分析したところ、そうした因果的効果は認められないという結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
災害復旧事業費についての研究は、学術誌に投稿中である。コロナ禍についての研究は、データを集めて分析し終えたところである。
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Strategy for Future Research Activity |
災害復旧事業費についての研究は、既に学術誌に投稿中である。査読の過程で、さらなる分析や調査を求められたら、適切に対応する。 コロナ禍についての研究は、既に分析結果を得られているので、それを論文にまとめ、学術誌に投稿する。 住家の被害認定についての研究は、次のように推進する。被災者生活再建支援金が支給されるのは、支給対象災害により住宅が全壊・半壊するなどした世帯である。そもそも、ある災害が支給対象となるためにも、その市町村で一定数の住家が滅失することが要件となっている。住宅の全壊・半壊の認定にあたっては、「災害の被害認定基準について」という通知があるが、実際には市町村の判断であり、被災者の苦情も多いところである。本研究は、回帰不連続デザインを用いる。滅失した住家がぎりぎり基準に達したので支給対象となった市町村(処置群)と、ぎりぎり達しなかったので支給対象とならなかった市町村(制御群)とを比べる。もし公平であれば、両群の間で諸変数の平均値はほぼ同じはずである。しかしもし逆に認定が公平でなければ、平均値は同じにならず、かつ処置群の方が制御群よりも市町村の数が多くなるだろう。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、当初報告を予定していた国内外の学会が軒並み中止になった(中にはオンライン開催になったので応募はしたが、却下されたものもある)。また同じ理由により、研究補助者に研究室に来てもらうこともできなかった(オンラインで可能な作業ではなかった)。次年度は、状況が改善した場合には、国内における学会で報告したり、研究補助者に作業を手伝ってもらったりしたい。また論文が採択された暁には、オープン・アクセスにしたいと考えている。
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