2020 Fiscal Year Research-status Report
経済学の実証研究における衛星画像と機械学習の応用―アフリカの開発政策を事例に―
Project/Area Number |
19K21686
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
牛島 光一 筑波大学, システム情報系, 助教 (80707901)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日野 英逸 統計数理研究所, モデリング研究系, 教授 (10580079)
小西 祥文 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (40597655)
木島 陽子 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (70401718)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 機械学習 / 統計的因果推論 / 開発政策 / 衛星画像 / サブサハラ・アフリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、衛星画像を用いた機械学習の手法が、サブサハラ・アフリカのような統計情報の不足する地域の情報収集のための強力なサポートツールになることを示すことである。これにより、衛星画像解析に加えて、機械学習を用いた社会経済的情報の外挿を試みることで、経済学における衛星画像利用の潮流の更に先を目指す。具体的には、第一に、ケニア全土における道路の質情報と衛星画像を教師データとし、そこで求めたモデルを用いて近隣諸国およびサブサハラ・アフリカ全体の道路の質を予測する。第二に、予測されたデータを用いた応用例として、大統領の民族優遇の問題や物流と市場統合の季節性の問題を考える。本年度は、機械学習手法によりケニアの道路の質データのパネル化を行い、そのデータセットを用いて大統領の民族優遇問題について調べた。
道路の質と衛星画像:ケニアの道路の質に関する空間情報と同じ時期の衛星画像を教師データとして、機械学習の画像解析手法によって、衛星画像に写っている道路の質に関する予測器を構築した。次に、予測器をもとに異なる年の同じ道路の質情報を予測した。予測精度は70%ほどであった。そして、教師データと予測データをもとに、ケニア全土の舗装道路に関する2000年から2010年までのパネルデータセットを構築した。
大統領の民族優遇と道路の質:構築したデータセットを用いて分析したところ、予測精度は70%ほどであったが、ケニアの政治や道路に関するアネクドートとほぼ一致する結果が得られた。(1)大統領と同じ民族の地域では道路の質が改善する傾向があった。(2)それ以外の民族ではそのような傾向は見られなかった。(3)ただし、大統領選挙で現職大統領が接戦で勝利した多民族の地域では、道路の質が改善する傾向が観察された。これらの結果は、自民族優遇と次回以降の選挙でも票を得るために優遇する地域があったことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度予定していた目標(研究実績に記載した内容)がおおむね達成されたため。また、アフリカ全土の衛星画像を自動収集する見通しがたったため。
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Strategy for Future Research Activity |
プロジェクト最終年度に当たる令和3年度は、(1)ケニアの道路の質の予測器の精度の向上、(2)サブサハラ・アフリカ全体の衛星画像データの収集、(3)ケニアで行った手続きをサブサハラ・アフリカ全体へ応用、することを目標とする。
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Causes of Carryover |
コロナ禍にともなう活動自粛によって、予定していた研究補助者の雇用ができなかったため、次年度使用額が生じた。これらを次年度に持ち越し、使用する。
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