2020 Fiscal Year Research-status Report
経済時系列の逐次統計解析とその応用~金融バブルの検出
Project/Area Number |
19K21691
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西山 慶彦 京都大学, 経済研究所, 教授 (30283378)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
人見 光太郎 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 教授 (00283680)
永井 圭二 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (50311866)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 逐次解析 / 単位根検定 / criticality test / 自己回帰モデル / 分枝過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己回帰過程および分岐過程で記述される時系列モデルについて、逐次データが入手されるときにそれぞれ、単位根検定の問題とcriticalityの検定を行う手法の数学的性質を検討した。逐次データがあるものとして、それをフィッシャー情報量が一定値に達したところでサンプリングを止め、その元でのAR1モデルベースの推定と検定の統計的性質を検討し、理論的な部分については完成している。昨年度までに基本的な数学的道具建てについては、離散確率過程の連続近似と確率解析の標準的な手法であるDDS定理やLANの構造を使った分析を行って論文をかなりの程度完成させることができている。 この論文を完成させるに当たっては、春、秋の日本経済学会、関西計量経済学研究会、統計連合大会において報告し、多くのコメントを得て改良を加えた。ひとつは最適性の議論であり、停止時と検定統計量の両者を用いた新しい検定についても、理論的根拠および数値実験による精度のチェックを行った。 提案している手法は、データが逐次的に得られている状況ではある種の最適性を有し、これを用いることによって、一定の精度を保ちつつできるだけ早く単位根やcriticalityを検出することができ、応用上も重要な貢献になると考えられる。なお、AR(p)の下での検定も同様に拡張することが可能で、autmented Dickey Fullerタイプの検定統計量を用いた単位根検定手法を提案、その漸近的性質を導出し、その論文を令和2年12月にAdvances in Eonometricsへ投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
AR(p)モデルについては、予定を前倒しにしてR2年12月に投稿した。多忙、AR(1)モデルについては昨年度に投稿予定であったが、コロナ感染症の影響で共同研究が円滑に進まず、最適性の議論や数値計算など追加的に研究を進めたうえで、それを内容を盛り込む必要がある。その上でR3年度中の投稿を目指している。それ以外については、ほぼ順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
AR(1)過程についての逐次解析による単位根検定と推定問題については、これまで作成していたものに最適性の議論と追加的な数値実験、数値計算の結果を加えて原稿を完成させ学術誌に投。ARモデル以外にも、 MA, ARMA, ARIMA, ARFIMAといった様々な時系列モデルについて停止時を用いて統計的逐次解析の解析手法が適用できることが考えられる。特に金融時系列モデルとして最も関心が高いARCH, GARCHなどの非線形時系列モデルにおいても当分析手法が適用できると考えられ、それらのモデルの研究を行う予定である。更に、変化点の問題について研究することを考えている。経済状態の変化を探知することは学術的にも政策的にも重要な課題である。膨大な経済・金融などのデータが秒単位でオンライン観測されている現状を考えると、未知の変化の変化点の早期探索、モデルの早期探知が重要な課題である。また、このプロジェクトの研究途中で、既存のDickey-Fullerテストと新しく提案する逐次単位根検定の検出力の間の関係の近似に関する結果が得られ、た。そのため、それを用いた検出力計算法の提案を検討する。 当初の研究動機とは少し離れるが、当該研究の進行中に新たに分枝過程が同じ枠組みで扱えることを発見した。これは感染症の拡大を記述するモデルとしてもよく用いられ、この方向の 研究結果は重要である。すでにある程度の結果が得られているが、更に追加的に数学的性質を精査し、更に実証分析に適用するための諸条件について検討を加える。
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Causes of Carryover |
本年度はコロナ感染症の影響で研究合わせや学会のための出張ができなかった。また、報告を検討していた学会がキャンセルになった。オンライン会議などである程度はカバーできたが、効率が悪く、それらの出張やシミュレーションにかかる人的費用、物品費、論文投稿にかかる経費として当該金額を次年度に用いる。
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Research Products
(6 results)