2021 Fiscal Year Research-status Report
International Comparison of Research Productivity of Economics
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19K21695
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
芹澤 成弘 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (90252717)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | 統計調査 / インパクトファクター / Article Influence Score / 学術誌 / 研究評価 / 引用数 |
Outline of Annual Research Achievements |
最近、Times Higher Education (THE)やQS World University Rankings (QS)などの大学の国際ランキングが関心を集め、マスコミでもよく取り上げられている。また、経済学の分野では、Tilburg University Top 100 of Economics Schools (Tilburg)も、注目されている。THEは、研究だけではなく、教育、資金力、国際性なども含めたランキングである。また、研究に絞っても、ランキングのための各大学のポイント計算を公表していない。QS分野別ランキングは、H-index Citations、公刊論文1本当たりの被引用数、雇用者からの評判(Employer reputation)、研究者間の評判 (Academic reputation)をウェイトづけしてランキングしている。Tilburgは、独自に選んだ経済誌数十誌と関連分野数誌への論文公刊数に基づいてランキングしている。これらのランキングは、研究機関に所属する研究者数を考慮していない。そこで、数年前から、日本の主要国立大学の経済・社会科学系の附置研究所とシンガポール国立大学経済学部および香港大学経営経済学部の研究生産性を国際的 学術誌への論文掲載数と引用数という明確な指標にもとづいて計測・比較している。今年度も、このような調査を継続した。 具体的には、Article Influence Scoreをもとに作成した経済学重要学術誌リスト(TOP20、TOP50、TOP100、TO200)と、経済学との隣接分野(経営学、社会 学、法学、歴史学、地域研究、統計学など)の学術誌を膨大に含む「拡張リスト」を使い、研究生産性(論文数の総数だけではなく、部局平均や中位値)を計測 した。さらに、被引用数についても、同様に調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
拡張リストは、経済学 TOP200 に含まれている学術誌に加えて、Web of Science の SSCI (Social Sciences Citation Index) の Business (153 誌)、Business, Finance (108 誌)、Management (226 誌)、Law (151 誌)、Sociology (149 誌)、History (101 誌)、History of Social Sciences (34 誌)、Political Science (182 誌)、Industrial Relations & Labor (30 誌)、Area Studies(80誌)、International Relations(94 誌)、Urban Studies(43 誌)、および SCI (Sciences Citation Index) の Operation Research & Management Sciences (84 誌)、Statistics & Probability (125 誌) に分類されている学術誌全てである。このような非常に多くの学術誌への日本の4部局に所属する研究者(合計108人)に加えシンガポール国立大学経済学学部の研究者(55人)と香港大学経営経済学部の研究者(147人)の論文掲載データは膨大であるが、かなりに正確に作成し、さらにその結果をディスカッション・ペーパーとしてまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年からシンガポール国立大学経済学部を調査対象に含めたが、海外の大学のデータを集めるには日本に比べて非常に多くのに労力と時間がかかることが判明した。日本の大学の研究者で同姓同名は少ないが、海外の大学では頻繁にいる。そのため、データ・ベースで検索した際に、対象研究者と同姓同名の多くの研究者の研究業績がヒットする。その中から、対象研究者の研究業績だけを絞り込む作業は、非常に手間にかかる作業である。2019年からはさらに香港大学経営経済学部の調査対象に含めたが、同じ困難があり、同部局に所属する研究者が膨大であるために、1年間で正確なデータを構築することは不可能と考え、2019年は同部局6領域のうち4領域の研究者に絞って調査し、2020年度にようやく香港大学経営経済学部6領域全ての研究者を対象に含めた調査を行うことができた。ただし、大量に新規データを集める際には、すぐに集計データの確認作業を十分に行うことは困難である。そのため、2021年度には確認作業を再度行った。 今後は、このように構築したデータを、国内研究機関の研究生産性の分析に用いる予定である。研究評価の国際基準は基本的に欧米中心に設定されているために、日本の大学に不利になっていると主張されることがある。もしそのような点があるならば、日本以外のアジアの国でも同様と考えられる。ところが、シンガポール国立大学経済学部や香港大学経済学部は、研究の国際評価基準で欧米の一流大学と並ぶような評価を得ている。そのような大学を調査することによって、日本の大学の国際化のための有益な情報が得られると見込まれる。 日本では大きな被引用回数がある社会科学研究者は、経済学研究者に偏る傾向がある。そのような傾向を、海外の研究機関と比較すれば、重要な分析になると見込まれる。今後は、そのような分析も行う方針である。
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Causes of Carryover |
2017年から日本の大学だけではなく海外の大学を調査対象に含めているが、各部局の研究者リストをどう作成するべきかに苦慮している。本研究では、各部局の論文数や被引用数の1人当たりと中位値を研究生産性の指標としているが、もし部局の研究能力が高い研究者だけをリストに含め、研究能力が低い研究者をリストから外せば、研究生産性の指標が高くなる。このような問題を避けるためには、全ての部局の研究者リストを同じ基準で作成することが必要となる。日本の大学だけを調査対象にしていた時には、同じ基準での研究者リスト作成は、比較的容易であった。しかし、シンガポール国立大学経や香港大学の雇用制度は、日本と大きく異なっているために、同じ基準で研究者リストを作成することが困難になった。 このような問題のために、日本の大学とこれら海外の両大学に共通する基準を設定し、両大学の研究者の雇用条件を一人ずつ調べてリストを作成することが必要である。2020年度と2021年に一応そのような作業を行ったが、実際に現地に赴き、詳細に確認する必要がある。そのような研究者の雇用条件の調査に、2022年度にシンガポールと香港を訪問する計画であったが、コロナ・ウィルス感染拡大のために、できなくなった。2022年度に感染が収まり次第、訪問する計画である。その費用のために、2021年度予算全てを年度中に使うことを控えた。
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Research Products
(4 results)