2019 Fiscal Year Research-status Report
小学生時代の教育・地域環境が非認知能力の形成に与える影響
Project/Area Number |
19K21696
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大竹 文雄 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (50176913)
|
Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
|
Keywords | 非認知能力 / 学校教育 / 社会的選好 / 労働市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度では、小学校時代の教育内容のうち学習指導要領で定められていないグループ学習や制服の有無などの教育手法と育った地域の特性と現在の性格特性、利他性、信頼、互恵性などの行動経済学的特性、経済的状況、幸福度・満足度などについて、インターネット調査の結果を用いて、教育手法、制服着用、地域の行動経済学的文化特性が、非認知能力や社会的選好に与える影響を推定した。Ito, Kubota and Ohtake(2020)では、日本の小学校において、グループ学習や反競争的教育などの学習指導要領に規定されていない教育手法や内容に大きな地域差があることを明らかにした。そして、それらが信頼や互恵性に影響を与えることを示した。具体的には、参加型・協力型の教育を受けていた場合には、成人になってから利他性、他人との協力の重視、互恵性、愛国心をもっていた。一方、反競争的な教育を受けていた場合には、これらの特性と負の関係をもっていた。Kubota, Ito and Ohtake(2019)では、グループ学習の経験者は、成人になってからの所得および金融資産保有額がそうでない人よりも低いが、利他性や互恵性が高いという関係を見出した。一方、グループ学習の経験者の幸福度や一般的な満足度との間には相関がなかった。ただし、グループ学習の経験者は、人間関係の満足度は高いが、経済的な満足度は低い。さらに、伊藤・窪田・大竹(2019)において、小学生の頃、近隣に神社・寺院・地蔵といった宗教施設があったことが、利他性、互恵性、一般的信頼に正 の影響を与えることを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小学生時代の教育環境や地域環境による非認知能力の形成とその金銭的・非金銭的影響について、国際学術雑誌に2本の論文、日本語の学術書に1章として論文を掲載した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度においては、小学校時代の学校における手洗いに関する衛生教育、小学校時代に近隣に寺社の存在と手水舎での手洗い習慣と現在の衛生習慣、利他性、危険回避度、時間割引率などの行動経済学的特性、ビッグ5などの心理的特性に加えて、新型コロナウイルス感染症対策に関する個人を追跡したアンケート調査を行う。成人になってからの感染予防行動が、小学生時代の教育や地域環境との相関があるか否かを検証する。また、行動経済学にもとづいた複数のメッセージのうちどれが新型コロナウイルス感染症の予防行動の促進効果が大きいかについて、ランダム化比較試験を行う。
|
Causes of Carryover |
昨年度予定していた非認知能力に関する調査に加えて、新型コロナ感染症対策に関する個人を追跡したアンケート調査を行うこととした。その調査を行うために次年度に持ち越した。
|