2020 Fiscal Year Research-status Report
Inequality and Precarity in International Comparison: Rethinking Social Polarisation in Japan and the UK from Global Perspective
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19K21699
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
眞嶋 史叙 学習院大学, 経済学部, 教授 (90453498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 健太郎 京都産業大学, 経済学部, 教授 (10387988)
Slater David 上智大学, 国際教養学部, 教授 (70296888)
玄田 有史 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (90245366)
石井 晋 学習院大学, 経済学部, 教授 (90296418)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 労働経済 / 格差社会 / 社会経済史 / 国際共同研究 / 労働経済学 / 社会階級論 / 労働史 / 社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度に、本研究は、新型コロナウイルスの感染防止に係る制約がある中でも、格差社会の国際比較を目指した共同研究を熟させることに、一定の成果を生むことができた。社会科学諸分野で活躍する研究分担者によって、不平等と不安定性との連環に関する研究は一層深化され、多数の研究成果物刊行へと繋げられている。日英比較共同研究の場が形成され、令和1年度末にイギリス、令和2年度初めに日本で国際会議を執り行う計画であったものの、新型コロナウイルスの感染拡大により、海外渡航を伴う国際共同研究の場を持つことが困難になり、計画延期せざるを得なくなったが、一方で、未曾有の世界的危機を前に、格差社会の現状がより明白に立ち現れる中で、研究の深化が進んでいる。令和2年度には、日英格差社会の相互理解を深めるため国際会議を、海外渡航を含む対面にて実施することをぎりぎりまで目指しつつ、代替手段として、オンラインでの実施可能性の模索とその準備も周到に進められた。令和2年8月に英国ロンドン大学経済政治学院(LSE)のマイク・サヴェジ教授(研究協力者)に対するメディア取材を仲介し、その調査取材に基づくドキュメンタリー番組が令和3年元旦に放映され、広く日本全国の視聴者に共同研究の成果の一部を還元することにつながった。令和2年11月には、英国ニューカッスル大学のナイアル・カニンガム上級講師(研究協力者)をオンラインでの学生シンポジウムに招き、大学内で試行された社会調査の分析結果を学生らとともに共有することができた。本研究の主要目的にある通り、パブリックとの対話を通じた双方向型調査研究の場を構築することを目指してきたが、令和3年度中に研究事業終了しなければならない中で、やむを得ずオンラインでの実施に切り替え、令和3年9月における一連の国際会議の開催を日・英・米からの主要参加者の間で決断し、現在、確かな準備が進められている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の令和2年度の進捗状況は、年度の最終成果として目指してきた、海外渡航を伴う国際会議の開催が見通せない状況が続いたため、ぎりぎりまで当初の形での開催を模索してきたが、最終的にオンラインでの開催への切り替えを判断し、現在、加速度的に準備体制を整え、巻き返しを図っているという状況にある。著名研究者の招聘を軸に置いた国際交流という意味では困難は伴うものの、国際会議開催準備作業の中で、共同研究の場が順次オンライン上で形成されつつあるという状況を鑑みて、やや遅れてはいるものの、順調に軌道修正がなされていると評価できる。本研究の令和2年度の活動の具体的内容としては、日英格差社会の相互理解を深めるための国際共同研究の場の構築を目指しつつ、社会科学諸分野における研究基盤整備に成果が見られた。労働経済学の分野では、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う労働市場の変容、大規模な休業者数の増加、そして格差拡大が進む経済のあり方について、議論がなされ、社会学の分野では、新型コロナウィルスの影響を最も受けやすい社会的弱者、特にホームレス、フリーター、そして外国人労働者の問題について、検討された。日本経済史の分野では、コロナ禍でも堅調な産業分野として、ステイホーム需要に応える日本の電機産業や宅配便業界の歴史的な再検討がなされ、イギリス社会経済史の分野では、100年前の危機の時代に、いかに労働市場の変容への対処が試みられてきたか、そしてパブリックとの対話の中で、若年労働者らにいかなる手引きがなされてきたか、再考している。令和2年4月上旬に予定していた学習院大学と京都産業大学の大規模企画は止むなく延期されたが、パブリックとの対話を通じた双方向型調査研究の場を構築することを目指して、オンライン企画の準備が進められている。1年半の延期によって、研究基盤整備が進んだため、想定以上の成果を目指せると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度である令和3年度の研究推進方策としては、新型コロナウイルスの感染拡大により格差社会の現状が一層明らかになる中で、研究の深化と再考が進んできたという成果を踏まえ、令和2年度中に部分的に実施できなかった研究活動を、より一層強力に推し進めるために、オンラインでの研究者交流を密に行いながら、国際共同研究の場と、パブリックとの対話を通じたデータ収集を伴う双方向型調査研究の場の構築を目指していく。まず、令和3年9月~10月にオンラインでの交流を基本形とする国際会議と公開討論会などの一連の企画を、国際研究者交流と世界的に通用する学術的成果形成を目的として、確実に実施する。この大規模企画は、研究者のみならず、学部生、大学院生、助教、卒業生、非正規雇用の若年層(ファッションデザイナー等)、出版社、テレビ局なども巻き込み、開催準備が進められてきたため、この状態をオンラインへとスライドさせ、日・英・米の3地点を同時配信で繋いだ形での、完全なプログラムの実施を断行できると考える。さらに、令和3年度末に向けて、本研究第2段階として、日英における格差社会の検討を国際的な視点を取り込んで拡張し、「グローバルな不平等と不安定性」を明らかにすることを目指す。日英比較研究を通じて、明らかになりつつある課題を、両国の枠を超え、かつての経済発展途上地域とされてきた、東南アジア、南アジア、アフリカ、ラテンアメリカへと拡大して、グローバル経済の進展と新型コロナウィルス感染拡大を契機に一層顕著になり始めた、新たな格差社会の形成と旧来からの不平等・不安定性の存続と融合の過程を検討し続けるため、国際共同研究の場の構築を目指した国際会議をオンラインで実施する計画を、推し進めている。令和3年度中に、国際的な双方向型調査分析方法を構築していくための共同研究の進展につなげていきたいと考える。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、本研究の令和2年度に開催を予定していた、国際会議等の延期が決定されたため。
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