2021 Fiscal Year Research-status Report
Inequality and Precarity in International Comparison: Rethinking Social Polarisation in Japan and the UK from Global Perspective
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19K21699
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
眞嶋 史叙 学習院大学, 経済学部, 教授 (90453498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 健太郎 京都産業大学, 経済学部, 教授 (10387988)
Slater David 上智大学, 国際教養学部, 教授 (70296888)
玄田 有史 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (90245366)
石井 晋 学習院大学, 経済学部, 教授 (90296418)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | 労働経済 / 格差社会 / 社会経済史 / 国際共同研究 / 社会階級論 / 労働史 / 社会学 / 消費文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度に、本研究は格差社会の国際比較を目指したオンライン学術交流を活発に実施した。社会科学諸分野で主導的立場にある研究分担者によって、不平等と不安定性との連環に関する研究が深められ、多くの研究成果物の刊行へと繋がった。令和3年度へと延期された国際会議は、オンラインでの開催となったが、日英比較共同研究の場の形成へと着実に繋がっている。具体的には、まず令和3年9月にロンドン大学経済政治学院(LSE)マイク・サヴェジ(研究協力者)を中心に4名の著名研究者による、公開パネルディスカッション「格差社会:日本と英国」がハイブリッド開催され、大学内の学生視聴者およびオンラインの一般視聴者との対話形式で双方向型ディセミネーションがなされた。続いて、国際シンポジウム“Class, Culture, Connection” がオンライン開催され、社会科学諸分野から招待された6名の報告者と3名のコメンテーターにより、日本の格差社会の現状報告と日英比較検討がなされた。10月には公開講演会「文化と階級:EPトムソン再考」が三大陸同時中継で開催され、日米英の著名研究者による自伝的な研究省察から新たな研究視座が提示された。12月には、英国ニューカッスル大学生たちを学生シンポジウムに招き、大学内で実施した文化慣行調査の分析結果を両国の学生同士で共有した。令和4年1月には、東北大学主催の「社会的不平等に関する国際講演シリーズ」での講演依頼を受け、本研究の一連の取り組みを紹介した。3月には、日英比較をさらにグローバルな視点から見直す作業の一環として、アフリカ、インド、ラテンアメリカの研究者を招いて、オンライン研究会 “Rethinking Class and Inequality in the Global South” が開催され、階級と不平等の研究を交差的に概念化するための、活発な議論形成がなされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の令和3年度の進捗状況は、計画以上に良好である。今年度の成果として目指してきた国際会議を、最終的にオンライン開催に切り替え、無事に完徹することができた。著名研究者の招聘を軸に、国際会議の準備・開催を通じて共同研究の場が順次形成されたことは重要な成果である。対面での開催は叶わなかったものの、順調にオンラインへの軌道修正がなされたと評価できる。本研究の令和3年度の具体的内容としては、日英格差社会の相互理解を深めるための国際共同研究の場の構築、社会科学諸分野における研究基盤整備と交差横断的な概念化の検討が進められた。労働経済学と教育学の交差する分野では、日英そして仏の格差社会・階級社会の形成について、教育制度比較と戦後史再検討により、特に大学間格差・大学内格差に注目して議論が展開された。社会学、人類学、地理学、ジェンダー論を横断する分野では、雇用形態に起因する経済格差、災害対応における地域間格差、女性と子どもの貧困、文化資本形成と再生産における格差について、日本における実態が実証データに基づいて論じられた。歴史学と社会学の交差する分野では、過去半世紀にわたり階級社会形成論に多大な影響を与え、理論的支柱を成してきたエドワード・P・トムソンについて、いかに彼が世論を導き、パブリックとの対話の中で若年層に階級意識を捕捉する世界観・歴史観を提示してきたか、再考した。令和4年3月には、日英の研究者らに共有された研究視座をグローバルに展開することを目論み、アフリカ、インド、東南アジア、ラテンアメリカの各地域の事例研究の中で実証する試みがなされた。この新たな試みを世界の研究者コミュニティとの対話を通じ、さらなる国際共同研究の場を拡充することを目指して、令和4年7月にパリで開催されるWorld Economic History Congress(WEHC)への参加準備が進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度である令和4年度の研究推進方策としては、新型コロナ感染拡大およびウクライナ侵攻による生活必需品の価格上昇で格差社会の問題が一層深刻になる中で、研究の深化と再考も促されてきたという現状を踏まえ、令和3年度中に実施できなかった対面による国際学術交流活動を推し進めるために、四大陸の研究者が共同で国際学会の場で研究成果報告を行い、世界的な研究者コミュニティとの対話を通じて、本研究の成果ディセミネーションと理論的枠組みの深化を目指していく。まず、令和4年7月に、全世界の研究者を4年に1度結集させる世界経済史学会(WEHC)で、日英比較パネルおよびグローバルパネルの2セッションを組織し、合計6本の個別事例研究の発表と、両セッションを概念的に繋ぐ架橋コメント、さらに総括ラウンドテーブルを企画して不平等と不安定性の問題の核心に接近し、国際学会参加者との質疑応答を通じて、世界的に通用する学術的標準の形成を目指し交流を深める。この対面での国際学会参加に向け、日英の研究者のみならず、アフリカ、インド、東南アジア、ラテンアメリカの研究も盛り込み、準備が進められてきたため、既存の国地域に分断されて比較困難であった分析枠組みを超え、新たな世界的歴史横断的に繋がれた形での、グローバルな視点からの見直しが図れると考える。さらに、令和4年度末に向けて、日英における格差社会の検討を国際的な視点を取り込んで拡張した、共同研究成果をオンライン刊行物として固めることを目指す。日英比較研究およびグローバルな見直し研究を通じて明らかになった課題を、新たな格差社会の形成と旧来からの不平等不安定性の存続融合過程のなかで検討し続けるため、国際共同研究の場の継続を目指す結論的な国際会議を日本で実施する計画も推し進めていく。国際的な双方向型調査分析方法を構築していくための共同研究の進展につなげていきたいと考える。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大により、当初は対面での国際交流を中核に置いた形での協力態勢を前提としていた、国際共同研究の遂行に遅れが生じた。令和2~3年度中に実施できなかった対面による国際学術交流活動を進めるため、第1に、令和4年7月に、四大陸の研究者が対面での国際学会の場で研究成果報告を行い、世界的な研究者コミュニティとの対話を図る計画である。第2に、令和4年度末に向けて、日英における格差社会の検討を国際的な視点を取り込んで拡張した共同研究成果を、英国の学会誌に投稿、またオンライン刊行物として日英の拠点大学にリポジトリーを置く計画である。第3に、令和5年3月に、日英比較研究およびグローバルな見直し研究を通じて明らかになった課題を、新たな格差社会の形成と旧来からの不平等不安定性の存続融合過程のなかで検討し続けるため、国際共同研究の場の継続と拡大を目指した包括的な国際会議を日本において対面で実施する計画である。これらの大きくは3つの企画を通じて、既存の国地域に分断されて比較困難であった分析枠組みを超え、新たな世界的歴史横断的に繋がれた形での、グローバルな視点からの見直しを図り、国際的な双方向型調査分析方法を構築していくための共同研究の進展につなげていく。本研究の成果ディセミネーションと理論的枠組みの深化を目指し、本研究の完結から次段階への発展的進化およびシナジーの形成を促していきたい。
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