2019 Fiscal Year Research-status Report
Majority decision rule with minority protection: meta-agreement by deliberaiton
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19K21703
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
金子 守 早稲田大学, 政治経済学術院, 特任教授 (40114061)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 公共事業 / 費用負担 / 少数派保護 / ゲームのルール / 熟議 / 費用負担の数式表現 / 表現の簡潔さ |
Outline of Annual Research Achievements |
単純多数決ルールは、多数派が少数派を無視することへの可能性を許している。しかし、自由を認めた民主主義では、少数派の存在は「民主主義」の定義に含まれている。そのため、少数派をどのように保護するかは「民主主義」の基本問題である。本研究課題では少数派保護を多数決ルールの中に含むように設計することを研究する。 2019年度は、市町村が参加する公共事業体(水道事業共同体、廃棄物処理場共同体など)の費用分担の問題について研究し、研究論文 "Deliberation and Meta-agreement: Majority Decision with Minority Protection" を執筆した。(下田 遼平 氏(早稲田大学 大学院経済研究科 修士課程)との共著)。参加市町村が費用分担率を議論・交渉し、分担率を多数決ルールに従い決定する。その決定のルールに、少数派の保護が含まれる。この少数派保護が入ったルールでの多数決意思決定を研究した。 また、多数決ルールで決定されるのは、文面で書かれた同意書である。そのため、言語(簡単な数式)的に表現できることが要請される。その表現の簡易さを定義し、簡単なものはどのようなものであるかを議論している。その分担方式の候補として四則演算(和、差、積、商)の範囲で表現できるものを考える。そのクラスの中で最も簡単のものは公共事業からの便益に比例して、費用を分担させるものであることを証明している。 この論文は Society for the Advancement of Economic Theory Conference (2019, July 04, Ischia, Italy) で発表した。その後、この論文に関連するいくつかの事実を研究していたので、上記論文はまだ完成していないが、2020年度中に完成させ、学術誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したように、2019年度は、いくつかの市町村が参加する公共事業体(水道事業共同体、廃棄物処理場共同体など)の費用分担の問題について研究し、研究論文 Deliberation and Meta-agreement: Majority Decision with Minority Protection を執筆している(下田 遼平 氏(早稲田大学 大学院経済研究科 修士課程)との共著)。参加市町村が費用分担を熟議・議論する交渉ルール中に、少数派の保護が含まれる。2019年度はこの少数派保護にどのような形態があるのかを分析している。 特に、熟議・交渉で到達する同意は、文面で書かれたものである。そのため、言語(簡単な数式)的に表現できることが要請される。その表現の簡易さを定義し、簡単なものはどのようなものであるかを議論している。もっとも簡単なものは公共事業からの便益に比例して、費用を分担させるものであることを証明している。しかし、これは費用分担の(各市町村の予算額に関して)累進性を許さないので、若干複雑になるが、どのような累進的な分担方式が可能か等については議論していない。現在まで、可能な費用分担方式は四則演算で表現されたものだけを考えているが、累進性を許すのにはより自由度のある表現形式が必要となる。 上記問題をどのようにすれば良いかは現在進行中の問題であり、2020年度の課題でもある。しかし、研究方向はほぼ確定してきているので、2020年度にそれが達成されると予想できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は[研究実績の概要]と[現在までの進捗状況]に記述した問題を更に進める予定である。 熟議・交渉で到達する同意を表現するための言語(簡単な数式)が、これからの研究目標なる。その表現のクラスをより明確にし、そこでの簡易さを表現する測度を定義する。これは計算機科学での計算の簡易さではなく、四則演算の表現そのものの簡易さを考えている。一番の問題点は費用分担の(各市町村の予算額に関して)「累進性」をどのように表現するかが問題になる。これを議論することが現在の課題である。 この累進性は「少数派保護」に直接関連してくる。2019年度の研究では「少数派保護」は意思決定ルールに入っているという形式的な要請であった。それに対して、「累進性」を意思決定で選ばれる選択肢の中に入れることが可能になれば、「少数派保護」をより実質的に議論することが可能になる。また、税制のなかの「累進性」の一般論への手がかりになると考える。2020年度の研究計画として、上記「累進性」の研究を計画している。 「累進性」を市町村の公共プロジェクトの費用分担問題だけでなく、所得税性・消費税性の「累進性」(逆進性)にまで広げて考察する。これによって、「少数派保護」また「民主主義」への含意が導かれると期待する。それゆえ、公共プロジェクトの費用分担問題における累進性の研究が急務と考えられる。2020年度はこの累進性の研究と一般的な税制の調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2020年2月~3月に、研究協力者の郡山 幸雄 准教授(Ecole Polytechnique Department of Economics)と、パリにおいて研究打合わせを行う予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により出張を中止したため、未使用額が生じてしまった。 2020年度は、市町村の公共プロジェクトの費用分担問題における累進性の研究と一般的な税制の調査を行う予定である。ケーススタディーのためモンテカルロメソッドによるシミュレーションスタディが必要である。そのためのソフト開発を計画している。 新型コロナウイルス感染拡大の状況により、各種対策を講じながら研究活動を進めて行きたい。
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