2020 Fiscal Year Research-status Report
人工知能取引の影響を考慮した、価格発見過程の再検討
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19K21704
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
北村 能寛 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (90409566)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 指値注文 / Low latency trade (LLT) / 価格発見 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究成果としては、以下が挙げられる。第1に、指値注文の価格発見におけるスピードが十分に速く、ニュースが市場に到達すると2秒以内に価格改定が指値注文によって生じる。これは、通常価格発見は取引の役割であると考えられていたことに対し、改めて指値注文、つまりは流動性供給者の役割が重要なことを示唆する。第2に、ニュース到達後になされる取引の利益を計算したところ、その額は経済学的にみてそれほど大きなものではない。つまりは、その十分なスピードを生かして、ニュースを受けて改定される前の指値(stale quote)を搾取かたちで利益を実現するとするLow latency trade (LLT)の存在を少なくとも十分に支持する結果ではない。理論的研究では、そのスピードを利用し、取引がstale quoteを搾取することで、あらたな均衡価格が実現するとするが、それを支持する実証結果ではない。むしろ、ニュースが到達すると取引をするのではなく、流動性供給者が指値価格を改定することで、価格発見がなされることが示唆された。従来では、情報を利用するにはその情報に基づく取引をすることが仮定されたが、情報を利用することで流動性供給価格を改定し、その行動で利益を追求する。なぜ取引ではなく、反対に取引の相手となること選択するのか。これは、この後者の行動が取引をすることよりも合理的、つまりは利潤最大に整合的であることによると考える。この点を前提とした理論的説明に取り組むことが次年度のテーマとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外学会報告は実現しなかったものの、「研究実績の概要」でのべた内容のワーキングペーパを書き上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針としては、なぜ取引ではなく流動性供給による価格改定を選択するのかに理論的観点から注目する。つまり、新たな情報を利用して取引を行うことで利益を実現するのではなく、指値注文の価格を改定することで、利益を追求する経済学的な理論的説明が必要である。これをうけて、実証分析に加え、理論分析(モデル構築)をも試みることが必要である。
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Causes of Carryover |
短期在外で進める研究計画の変更による。
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Research Products
(2 results)