2021 Fiscal Year Research-status Report
Quantitative approach to aesthetic labor and social stratification
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19K21721
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
太郎丸 博 京都大学, 文学研究科, 教授 (60273570)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | 社会階層 / 自己呈示 / 化粧行動 / 印象管理 / ハビトゥス / 階級文化 / 美的資本 / 服飾行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
容姿を適切に整えることは、自己呈示の一種であり、アイデンティティの一部を構成すると言われている。美的労働を企業の自己呈示ととらえるような研究でも、個人ではなく企業のアイデンティティの構成という違いはあるものの、容姿を整えることをアイデンティティの構成ととらえる点では、同じである。 これらの先行研究の主張は、間違っていないだろうが、事態の一面しか見ていない。大企業の採用担当者へのインタビューから明らかになったのは、美的労働は個人や企業のアイデンティティを構成するだけでなく、場の秩序の重要な構成要素である、という点である。働くときはいつもだいたい同じ服装という人もたくさんいるが、ケースバイケースで異なる服装をするという人もいる。私たちがインタビューした人事担当者の多くが異口同音に述べていたのは、どんな服装をするのが「正解」かは、誰にどんな場所でどんな用件で会うか(いわゆるTPO)に依存する、ということである。例えば普段工場や研究所で商品開発や実験などをしている人は、作業着や白衣などを着ていることが多いが、大事な会議や社外の人と会う場合は、それらを脱いでスーツに着替えるという例は珍しくない。また、営業職の場合も訪問する相手にあわせて、つまり相手と同じような服を選ぶ、という話を何回も聞かされた。もしも服装をアイデンティティの一部と考えるならば、ケースバイケースでそれが揺らぐというのでは、すでにアイデンティティとは言いにくくなってくる。むしろ、その場の構成要素と考えたほうが、筋が通る。もちろん、一見異なる服装の背後にも一貫性(例えば、清潔感があるとか、だらしない恰好ではないとか)がある場合も多いのだが、よく言われるようにスタイリッシュなスーツを着こなして、スタイリッシュな企業イメージを作り出す、といった話は、私たちが話を聞いた人たちからはまったく聞かれなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの蔓延により、大学の本務業務が予想以上に多忙になり、研究に十分な時間を割くことができなかった。そのため調査までは予定通り実施したが、分析を終えて成果を発表するところまでできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は 2021 年度中に実施予定だったデータの分析を行い、分析結果を公表する。現在、調査の報告書を執筆中で、7月中には京都大学のレポジトリに公開する予定である。また、分析結果は日本社会学会で報告する予定である。これらの結果を踏まえてさらに論文や書籍などの形で研究成果を公開していく予定である。
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Causes of Carryover |
研究が全般に遅れており、メインの調査を終えるところまでしか研究が進まなかったために、その後に使用する必要のある支出ができなかったため。2022年度は小規模なフォローアップ調査を行うとともに、データの分析や研究成果の出版を行うので、助成金はフォローアップ調査や研究会の開催、成果報告・出版のために使う予定である。
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