2019 Fiscal Year Research-status Report
循環型社会に衣類を適用させる新指標の作成~「衣類=資源」という意識の醸成に向けて
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19K21730
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Research Institution | Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
熊谷 伸子 文化学園大学, 服装学部, 准教授 (80328898)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡林 誠士 文化学園大学, 服装学部, 准教授 (30581813)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 循環型社会 / 衣類 / 処分方法 / 環境意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
衣類における循環型社会環境システムの構築を目指して,本年度は,生活者,中小アパレル企業に対するネットおよびインタビューによる循環型社会環境への意識調査,また,処分衣類の再資源化方法の選択肢の一つになると期待できる高密度固形化の試みを行った. 循環型社会環境への意識調査からは,生活者は衣類の処分方法が高価格帯商品の場合は,ネットで売る,休眠したままであるのに対し,低価格帯の商品においては一般ごみの割合が多くなっており,購入価格が廃棄方法へ関与していることが示唆された.また,いわゆる大手といわれるアパレル企業においては,着なくなった衣料の回収等を企業が実施している環境を,ここ数年で一般生活者が知ることが出来るようになった.しかし,中小のアパレル企業については社会的発信力が弱いため,リサイクル素材の使用や店舗環境も含めた企業としての環境配慮活動の内容が生活者に訴求出来ておらず,販売現場でのアピールの必要性等が確認された. 処分衣類の再資源化方法として本研究グループで研究している衣類の高密度固形化は,処分衣料の嵩を減らすことができることは言うまでもなく,新素材やエネルギー資源としての活用法も見込むことができるものである.特に,災害用の長期備蓄燃料などになることはもちろん,牽いては,衣類乾燥機や繊維製造時の熱源燃料として活用する等,繊維業界における循環型社会を形成できる可能性を秘めている.本年度はその基礎研究としての視点から4種類(綿,ウール,シルク(6目/14目),ポリエステル)の繊維原料を用いて,高密度固形化後の成型物およびその熱特性を検討した.各繊維素材を高密度固形化した結果,表面彩色は素材と同じ白色または一部が焦げ付いた色の成型物となった.一方,ウールでは素材の生成色から黒色化した.また,高温空気燃焼試験の結果,緩慢な燃焼を実現することが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
衣類の循環型社会環境システム構築に繋がる基礎情報の集積として,生活者および中小企業への調査を実施したことで,現在の課題を改めて確認できた.また,処分衣類の再資源化の方法の選択肢の一つとして期待できる高密度固形化の基礎実験を行ない, その可能性について確認することができた.以上より,本研究全体としてはおおむね順調に進展していると言える.一方で,コロナ感染拡大による社会状況の急激な変化に伴い,国内外での実地調査が困難となった点や高密度固形化の試みにおいて想定以上の時間と費用を必要とすることから,今後検討が必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
衣類の多様性を考慮すると,限定的ではあるが近年の様々な取組によって衣類の再資源化の方法は拡大している.このような再資源化の情報を海外も含めて取り纏め,衣類を資源化するための基礎的情報とし,多様性を持つ素材・製品からリサイクル先を検討するという現況行われているアプローチ以外の方法についても検討を行ない, 衣類の素材と再資源化先が同期されている循環型社会のモデル構築を目指す. その際に,廃棄された衣類について,資源として廃棄されたもの・一般ごみとして廃棄されたもの等,国や業界のデータを収集する必要がある.さらに衣類を循環型社会のシステムに組み込む可能性を拡げるために,高密度固形化の実験を引き続き行うと共に,その成形物の活用法についても検討を行なう.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により、試験用布帛を用いた高密度固形化の実験を実施出来ず、また、研究の打ち合わせや調査に伴う出張の取りやめが生じたために、残金が発生した。2019年度に行えなかった分は、次年度以降に遂行予定である。
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