2019 Fiscal Year Research-status Report
Career support education to the care manager who realizes co-creative care for client of cancer and family
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19K21775
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中谷 久恵 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (90280130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 恵子 公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団, ダイヤ高齢社会研究財団(研究部), 客員研究員 (10339773)
泉宗 美恵 山梨県立大学, 看護学部, 准教授 (40468228)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | ケアマネジャー / がん療養者 / 介護支援専門員 / ケアマネジメント技術 / 家族 / 在宅療養 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、介護支援専門員であるケアマネジャーが、がん療養者と家族が望む生活を実現するケアプランを立案できる教育を構築し、ICTを活用した効果的な学習方法を2021年度までに明らかにすることである。2019年度では、がん療養者と家族へ行うケアマネジメントを実践するケアマネジャーの職務内容を明らかにする調査を行った。がん療養者を対象としたケアマネジメントの職務内容から実践力を測る尺度は、2009(平成21)年度に中谷と泉宗がケアマネジャーへの前向き調査ですでに明らかにしているが、この尺度開発の時期からは約10年が経過している。そのため、現状の制度に合った内容を加えて新たな尺度案を作成することとした。 まず、文献レビューを行い、10年間でのがんに関連するケアマネジメントの調査内容から、がん療養者のケアマネジメントの習得に必要な能力をまとめた。次に、主任介護支援専門員のうちがん療養者を在宅で看取った経験がある5事業所のケアマネジャー5名を研究協力者として、2009年度版の職務内容のアイテムプールに対するヒアリングを行った。ヒアリングにより修正した個所をふまえて、経験年数やがんのケアマネジメント経験がないケアマネジャーにも使用し、理解ができる尺度であるかを検証するため、研究協力者の5事業所に勤務する44人のケアマネジャーに任意で匿名によるパイロットスタディを依頼した。調査内容は、がん療養者へのケアマネジメント技術である20項目に対する適切性と必要性である。その結果、経験1年から19年目のケアマネジャー41名から回収が得られた。これらの結果を踏まえた最終案について、ACPがわが国よりも先行している米国の研究協力者2名を加えて研究者会議を開催し、国際的視野の観点からもケアマネジメントの共通認識ができる業務からなる技術であるかを討論し、実践力を測る尺度案を完成させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画として2019年度は、ケアマネジャーの実践力を測る職務内容の尺度は研究協力者のヒアリングによる意見を踏まえ、既存の尺度に現状を反映させた新たな尺度(案)を作成し、ケアマネジャー600人を対象とする横断調査を実施し、その結果から、終末期のがんケアマネジメントを学ぶ教育内容を統計学的に把握するところまでを計画案としていた。しかし、主任介護専門員との研究協力者会議の結果、横断調査におけるケアマネジメント技術20項目の妥当性と調査フィールドの選定において、以下の2つの課題を慎重に検討する必要性が示された。 まず1点目の技術項目の妥当性では、がん末期の介護ベッドは介護保険外から購入できる制度へと変更となったことや、ケアマネジャー取得資格の条件である経験5年以上の事務系職員は平成30年度で終了し今年度から国家資格者のみが対象となっていることなど、制度の変更点を業務内容に反映させる作業が必要であることや、この制度上の背景は経験年数が少ないケアマネジャーの実践力に影響を与えている可能性がうかがえた。さらに、医師との連携項目についてケアマネジャーが行う必要性への賛否や訪問看護が利用されれば敢えて行わない業務であるなど、研究協力者の価値観による差異も示された。2点目の調査フィールドについては、特定事業所加算が制度に加わったことで、加算の有無により終末期ケアマネジメントを行わない事業所があることも判明し、がん終末期に特化した調査の事業所の選定を討議する必要性が生じた。これらの理由から今年度の横断調査を見合わせ、事前の検討を十分に行うためには研究協力者以外の多様な意見を参考とするため、パイロットスタディを行うことを加えた。さらに、米国の研究協力者との意見交換が12月になったこともあり、研究の進捗が遅れることにつながった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の研究目的は、ケアマネジャーがケアプランの作成能力と実践力を高めるための教育内容を明らかにし(調査1)、ケアプラン作成に必要な社会資源の知識と実践技術を高める教材を制作する。調査内容は、アンドラゴジー・モデルを参考にした成人教育の主体的学習に必要とされる内面の自己概念を把握する項目と、がん終末期ケアマネジメント業務の実践技術である。調査対象者は、ターミナルケアマネジメント加算、特定事業所加算(Ⅳ)を標榜する居宅介護支援事業所と非加算事業所のケアマネジャー各300名の合計600名である。この調査結果から、終末期のがんケアマネジメントを学ぶ実践技術のうち優先される教育内容を統計学的に把握し、eラーニングで学べる動画教材を制作する(調査2)。動画教材の案としては、ケアマネジャーが利用者から信頼されていく成功体験が見える化できるよう、自己概念の1つである有意味感を高める内容を取り入れていく。学習の動機づけや自己概念がケアマネジャーのどのような背景(基礎職種、教育歴、雇用形態、経験、地域性等)と関連があるかを解析により明確にする。 さらに、調査2の教材作成では専門的助言者の意見(成人教育、ICT教育)と米国のケアマネジャーの職務内容を把握し、教材の要素に加える。情報収集施設は研究協力者であるボストン在住の医師がマネジメントを行い、居宅を担当するケアマネジャーと面談し、ACPにおけるケアマネジメント技術を聞き取り、共創的なケアプランに活かせる留意点と、事前指示書の示し方について情報収集を行い、動画教材に取り入れる。渡航できない場合にはテレビ会議等も検討する。調査1と2の結果については、主任介護支援専門員である実践家と研究協力者会議を招集して意見を聴取し、動画教材を完成させるとともに、eラーニングシステム構築(案)までを年度内に行う。
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Causes of Carryover |
現在までの進捗状況に記載した理由により、国内と海外の研究協力者を交えた研究者会議の結果により、2019年度に行う予定であった全国調査を延期し、パイロットスタディを行ったことから、横断調査の実施を次年度に見送ることとなった。そのため、2019年度の調査費として計上した文具・事務用品やデータ入力用ノートパソコン(物品費)、調査協力機関への訪問依頼(旅費)、データ入力の補助者と調査結果への専門的助言者2名(成人教育とICT教育)への謝金(人件費・謝金)、郵券代やデータ分析SPSSソフト(その他)のすべてにおいて、次年度へ繰り越す必要が生じた。これらの横断調査は2020年度の調査1として計画しており、繰り越した経費での実施を予定している。 加えて、2020年度に請求した金額には、申請時の計画にそって当該年度に行う予定のeラーニング用の教材を制作する費用と教材制作における情報収集にかかる費用を調査2として請求した。さらに、2020年度には、研究協力者会議の開催に要する経費、2019年度に行った文献調査やパイロットスタディの学会発表経費、2020年度調査結果の公表経費等を請求している。
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