2019 Fiscal Year Research-status Report
「農家の知恵」を学校の栽培学習に活かすための科学的実証研究
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19K21777
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
平尾 健二 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (70301348)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 有機農法 / 農家 / 小中学校 / 栽培学習 / 作物の栽培 / 農業技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,以下の農業技術について,それらの確立者である農家の協力を仰ぎながら学校での実現をめざすための基礎研究を行った。 【研究1.『有機農法菌ちゃん元気野菜づくり』】 本農法の確立者である吉田俊道氏を研究協力者として,学校を想定とした「不良条件」農地における,雑草投入法による土作りと野菜栽培の可能性について探ることとした。具体的には,物理性(硬度),化学性(低pH)に注目し実験を行ったところ,それぞれに土質に改善が見られ,野菜の生育も良好となることが明らかとなった。それぞれに,投入された雑草が微生物によって有機物へと分解され,それを基に土の団粒性が向上すること,微生物が乏しい状況では,まず土壌動物による分解によってそれが促進されることが確認された。また,生育の改善とともに,食味や栄養面(抗酸化力)も向上することが大学生を被験者とした食味官能調査ならびに成分分析から明らかとなった。 【研究2. 『除草機「ホウキング」』】 本農法の確立者である古野隆雄氏を研究協力者として,本除草機の除草メカニズムの基礎的解明について,作業効率と雑草発生の面から解明を試みた。従来の手除草,農具を用いた除草と比較したところ,夏作物(トウモロコシ)栽培において,作業者の負担が大きく減少することが数値的に明らかとなるとともに,ある程度の雑草の残存があっても収量は影響が少ないことことが確認された。また,雑草の種類(単子葉,双子葉)によってもホウキングによる除草効果に違いがあることが,地下部の伸長状況の違いから推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つのテーマを同時進行させながら,両テーマとも全国的に著名な有機農業者から今年度の成果について高い評価をいただいていること,ならびに,それぞれ教育現場での応用を視野に入れながら,基礎的な科学的検証を進めることができていることの理由から,現在までの進捗状況について,「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,それぞれのテーマについて,有機農業者の助言を得ながら遂行しているが,さらに専門的な検証を行うために農学関係の専門研究者(微生物生態学等)との連携を進めながら,教育現場での実践を深めるために小・中学校の現職教員との授業実践を行うなど,幅広い研究協力体制を築くことが必要であると考える。今後はこの体制を築きながらより深い科学的検証を進める予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として,当初予定していた有機農家を研究協力者として行う教員対象セミナーが,新型ウイルス対策のため開催できなくなり,謝金等が残ることとなったことが大きい。 また,土壌成分をはじめとした機器分析については,既存の機器を駆使しながら研究を行うことが可能な部分もあったため,想定よりも物品費が少なくなった。 そのため,次年度は上記セミナーの開催はじめとした本研究の遂行のために,翌年度の助成金と合算する形で有効に使用したい。
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