2020 Fiscal Year Research-status Report
オートリンガル時代における言語運用能力像の構築と新学習戦略の実践
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19K21790
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
片田 房 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70245950)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | オートマルチリンガル / サイバー・リンガ・フランカ / 母語と概念思考 / 思考と教育言語 / 発信の言語 / 翻訳と公教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の第二ステージにあたる2020年度では、主に以下①~④の活動を遂行した。 ①<言語と抽象的・論理的思考力の相関性をみる新しい指標の開発>思考・学習力・研究力の持続的発達に及ぼす言語力をみる指標として、ノーベル賞受賞者の言語背景を選び、受賞者の母語、第2言語、小学校教育の言語、及び受賞者が所属した高等教育機関の使用言語に関する情報をネット上から採取し、全6分野、1901年から2020年までの全受賞者分(合計948名)の整理を完了させた。更に「母語による公教育の重要度」と「抽象的・論理的思考力」との相関関係をみるため、統計的ネットワーク解析を使った予備解析を行った。 ②<新学習戦略の一端としての語彙開発>基礎数学と憲法を二つの基本分野と定め、日本国憲法の英語版と合衆国憲法より、ある基準に従って単語を抽出し、各単語の出現頻度、意味、連語関連情報等を整理した。これらの語彙の新学習戦略の一端としての妥当性を確立するため、大学生の必修英単語(2000-ワードレベル1000語とアカデミックワード570語)、TOEIC15,000語、受験会の難単語集、及び北米の大学院入学に課せられるGMAT-Graduate Management Admission Testの語彙ビルダー4507単語)と比較し、網羅率を算出した。 ③<母語による初等教育の可能性>初等教育が母語で行われることの重要性に基づき、多言語使用地域の一例としてフィリピン共和国(ミンダナオ)のダバオ・デル・スル地区の言語調査を続行し、現地言語のひとつであるタガカウロ語での教科書開発が困難な理由を明確化した。 ④<ディスレクシアと英語>代表的言語リズム(ストレス型英語圏、シラブル型フランス語圏、モーラ型日本語圏)の観点から、英語に特有の韻律構造を解明し、英語圏に音韻性ディスレクシアが顕在化し易い理由を言語構造の観点から理論化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・CORVID-19災禍が好転せず、当初計画した海外における活動を全面的に停止せざるを得ない状況下に置かれた。また、研究協力者との打合せは、国内外共にすべてオンラインに頼らざるを得ず、進行の効率性及び各研究事案の完成度に改善の余地を残した。 ・しかしながら、「翻訳と公教育」に関する新しい知見を獲得する等の収穫もあった。 ・更に、当初計画したすべての事案に着手はしており、CORVID-19への対策がワクチン接種を含めて進行すると思われる2021年度後半以降には相当部分を補完できるものと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19災禍の影響を受ける可能性も否めないが、可能な限り以下の項目を遂行し、遅れを取り戻すと共に、本研究の完成を目指す。 ・第一に、未完のデータ収集(古今東西のフィールズメダル受賞者の言語背景)と基礎数学を網羅する語彙と連語情報の整理を完成させる。 ・第二に、収集したデータ(ノーベル賞及びフィールズメダル受賞者の言語背景)の数理解析をCommunity Detection の手法を用いて完成させる。 ・第三に、英語圏に顕在化し易い発達性ディスレクシア(特に音韻性読み書き困難として顕在化する学習障害)の言語学的分析を含む解説書を執筆し、母語による公教育の重要性と英語一極集中に伴う注意事項の啓蒙を促進させる。 ・第四に、本研究の最終ステージとして、ポータブル自動翻訳機・通訳機の普及度と性能の調査を続行し、理工系学生の気質に合った効率的な英語カリキュラムを構築する。 ・第五に、本研究を発展させるステージとして、2020年度に得た新しい知見(公教育における翻訳の役割り)に基づき、国際学会にてパネルを開催する。
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Causes of Carryover |
・CORVID-19災禍の好転が見込めず、2019年度から2020年度に持ち越した事案(南米ボリビア-サンタクルス地区の日経社会における継承言語とスペイン語による学習熟達度の調査)を遂行することができなかった。同様の理由により、国際学会での発表と啓蒙活動が停滞した。また、米国、欧州、東南アジアの研究協力者との打合せをオンラインにたよる状況が続いているため、当初の計画より効率が悪く、研究代表者によるデータ確認も遅れがちであった。このため、統計解析にも後れを生じた。 ・2021年度に持ち越した事案(基礎数学を網羅する語彙と連語関連情報の整理、古今東西のフィールズメダル受賞者全員の言語背景調査、及び統計解析処理)に使用する。 ・CORVID-19災禍の状況が許す限り、海外にて遂行する計画の実行に使用し、本研究の完成を目指す。
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Research Products
(2 results)